●ブラックホールの予想と観測
 X線源であるはくちょう座X-1はその強度が約5日で変化し、青い超巨星と連星系をなしている。これは降着円盤から発せられたX線であり、その中心には 光を発しない大質量天体が潜んでいると考えられた。このようなX線天体は現在では数多く見つかっており、いずれも中性子星またはブラックホールが関与して いると考えられている。
また、クエーサーの発見以来、銀河の中心核にはブラックホールがあるのでは?と考えられるようになり、特にそのスペクトル観測の結果は太陽質量の数十万 倍から数百万倍のブラックホールの存在を示唆するものであった。1995年、日本の三好真らは野辺山及びVLAによる水メーザーの観測結果から、M106 の中心部分のガスが非常な高速運動をしていることを発見した。そして中心からの距離から考えると、太陽質量の約100万倍ほどの質量が、数光年(?)とい う大変狭い領域に存在していることが確認された。この結果から、中心部にはブラックホールが存在している事が証明された。

●クェーサー・活動銀河の発見
1950年代に多数の電波源が発見され、その中に光学的には星と区別できないが、強力な電波を発するものがある。1960年、トマス・マシューズとアラ ン・サンデージはこれらを特殊な恒星だと考えたが、その特徴があまりにも恒星からかけ離れていたため「準恒星状天体」略して「準星」と呼んだ。クェーサー という名前も英語の「quesi-stellar object」の「quesi-stellar」に由来する。また頭文字を取り「QSO」とも書く。
1963年に、3C48、3C273という天体のスペクトル観測したシュミットは、そこに見られた不可解なスペクトルを異常に大きい赤方偏移のためと考 えたが、それには膨大なエネルギーが必要であり、ここに全く新しい天体としてクェーサーが登場する。大きな赤方偏移、電波からX線までの強力な放射、激し い時間変化等々から、クェーサーの正体について様々な解釈がなされたが、現在では非常に遠い天体という説に落ち着いている。セイファート銀河、ブレーザー などクェーサーに準ずる銀河もたくさん見つかり、銀河中心核の活動は降着円盤を基礎とした統一理論が構築されるまでになった。

●大規模構造とダークマターの存在
 1927年、ヤン・オールトにより銀河系中の恒星のディスク面に対する上下運動の観測結果が発表されたが、これは当時知られていた恒星及び星間ガスの質 量のみから予想された値を超えていた。観測結果から得られた結論は、銀河系の質量は光学質量の倍は必要である、というものであった。これを当時「行方不明 の質量」と呼んだ。
続いて系外銀河の回転曲線が観測されるようになると、銀河の質量は光学質量の10倍ほどにならないと説明がつかなくなってきた。これは「行方不明」というにはあまりにも多すぎるため、名前を変更し「ダークマター問題」と呼ぶようになった。
その後X線銀河団の観測から、ダークマターは可視質量の~100倍にもなることが予想されている。
ダークマターの候補としてはバリオン物質(ブラックホール、中性子星、褐色矮星など、観測されていない天体)または非バリオン物質(ニュートリノ、アク シオン、Susy Perticle)が候補に挙げられているが、未だに謎のままである。また宇宙の大規模構造(大域的構造ともいう)を形成するためには、3K宇宙背景放射 から予測される「ゆらぎ」の大きさでは不十分であり、その点からも現在、宇宙進化を考える上でダークマターの存在を欠かすことは出来ない。
この宇宙の大規模構造は「銀河が一様ではなく偏在している」ことや、1970年代からコンピューター・シミュレーションの結果などからも指摘されてい た。これが1980年代にはいると、CCDカメラの登場によって銀河の距離を求めるのに必要なスペクトル観測の時間が短くなり、「宇宙の地図」を作る準備 が整った。1978年にはスティーブン・グレゴリーらが幅2億光年にもなる超銀河団を発見したのを始め、1981年にはロバート・キルシュナーらがうしか い座方向にさしわたし2億5000万光年にも及ぶボイドを発見した。そして1986年にはマーガレット・ゲラーらにより「銀河の地図」が発表され、グレー トウォールなどが見いだされた。
一方COBEの結果からは「宇宙はかなり一様」であることが示唆されており、この大規模構造がどのようにして形成されたのかは21世紀の課題である。

●宇宙背景放射の発見とビッグバン宇宙論の確立
 前世紀まで神の領域であった宇宙論は、1916年に発表されたアインシュタインの一般相対性理論によって初めて科学の分野に入ってきたといえる。様々な 宇宙モデルが論じられる中、1946年ジョージ・ガモフが宇宙はファイアボール(後にフレッド・ホイルによってビッグバンと名付けられる)より始まり、現 在数度Kにまで冷えてきていると予測した。そして1965年にアーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンにより、宇宙のあらゆる方向から3度Kに相当する 電波がやってきていることが発見され、これこそビッグバンの名残であると考えられるようになった。
その後、スティーブン・ホーキングによる「量子宇宙論」や、アラン・グース、佐藤勝彦らによる「インフレーション宇宙論」などで様々な問題を修正しながら、ビッグバン宇宙論は宇宙進化の根幹をなす理論として支持されている。