読了です。

「BEATLESS」
 長谷敏司著
 KADOKAWA刊

上下巻を頑張って読了です。もともとはNewtypeで連載していたそうですが、アニメ化に先立ち、加筆修正しての刊行だそうです。

で、今回はいろいろと考えた内容を書きます。Facebookやeightに書いた内容をアップグレードしています。

実はこの作品、原作からではなく、アニメから入りました。最初は

「なんじゃこりゃ、アンドロイドの女の子とのラブラブを目指す話か」

と思っていたものの、しばらく見続けると、全く意味が違う事に気がつきました。そして原作を読むと、それが確信に。AIとアンドロイドによって、生活上の面倒な事をどんどん自動化していった22世紀。とっくの昔に人間を越えてしまった超高度AIに支配される事を恐れながら、一方で身の回りの事をAIに任せてしまっている未来。そしてAIに仕事や居場所を奪われたと思っている人々と、AIを駆使して君臨する人々との格差もあり、AIの考えを理解できない、そしてそのAIの進化が人間社会にもたらす理不尽、そういうものを描いている作品なのです。

確かに、仕事でAIを使っていると、今でさえ

「なんでそう判断した?!」

という結果をちょこちょこ出してくれます。今のレベルでさえ、ちょっと人間の理解の範疇を超えているのです。これはたぶん、人間よりも処理能力が高いAIに潤沢な時間を与えると、人間だと時間の制約から無意識のうちに見て見ないようしていたモノに関連性を次々と見つけてくるんだと思います。今は私もAIの見つけてくる関連性や予測と、こちらが事前に想定した結果とで一致する部分を見つめ、それを足がかりに差異が発生した理由をひもとく作業をしています。それで、AIの「クセ」を見抜こうとしているのです。

ですが、もし本当にシンギュラリティがやって来るなり、そこまで行かなくても、人間が意味の解釈を考えるスピードよりも、AIが自動的に関連性を見つける速度が圧倒的に上回ってくれば、「BEATLESS」のような時代がやって来るかも知れないというのは、肌感覚で理解できます。その時にAIが、自分が制御できない人間の動きを、何らかの形でコントロールしようとするだろうという事も含めて。下手するとディストピアが現れるかも知れないわけです。主人公の友人は、AIと人間がお互いを理解できるわけがないと信じ、一方で主人公は人間とAIの間に心の交流に似た何かが生まれる事を期待し続けます。どちらが正しいかなんてわかりませんが。

では私はと言うと、AIに関係する仕事をしていますが、今の私にはAIの進化を止めようという気も無く、たぶん推進する側に居続けると思います。今の「自動化」なら単にマクロとかバッチ処理レベルのRPAでしかないけれど、AIはそれではおさまらない高度なRPAを作るための基礎になるからです。私には、というか人間にはもっともっと自動化したいものが世の中にはたくさんあるので、それを追求し続けると思うわけです。

ただ、それによって仕事を奪われる人がいるのも事実でしょう。なので、それに対応するための教育機会の提供というのが必要になるはずです。

その時に重要なのは、

「機械やAIに仕事を奪われるかも」

という低レベルの話であってはいけません。むしろ、身の回りの世界の大部分がRPAやAIで自動化された時に、人間は何をすべきかという事を、ちゃんと考えておく事でしょう。

そういう意味で、この話はAIとの付き合い方を考える上で、大変示唆に富む話だと考えるのです。

 

今月の歩数:2,549歩
今日の体重:未計測