カテゴリー: 科学技術全般

なゆた

ついに一般公開が始まった。くそぉ、見に行き損ねた!

「なゆた」一般公開 西はりま天文台望遠鏡

まぁ、望遠鏡は逃げないし、もうちょっとシーズンが進んだ方が見たい天体も増えるからいいか。いずれにせよ口径1mとはまた違った世界が見えるはずだし、ちょっと楽しみではある。

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低緯度オーロラの撮影に成功 山梨・南アルプス市

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無人機

めでたい話かも。

日の丸無人機に出番、宇宙ステーションへの物資輸送へ

だが問題は、この無人機はいつ完成するんだ?という点。まだ完成したわけではない。しかもそれを打ち上げるのに必要なH2Aロケットも、前回の打ち上げ失敗以来、着実に改良を続け、安全性の向上を図っているものの、未だに打ち上げ再開の目途は立っていない。

お隣の中国は国家を挙げての宇宙開発だが、こちらは予算のない貧乏開発だからなぁ・・・一体いつになることやら。

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総合学習への提言 ~FCSノススメ~

1.はじめに
 現行の学習指導要領から施行されている「総合学習」の時間。従来型の教科の枠に捕らわれたままの学習では問題があるとして、その枠を超えた学習を行うた めに設けられた枠である。しかし実際のところは「何をして良いのかわからない」と、時間が不足した授業の補習時間に使われたりしているのが現実のようであ る。
しかし2002年度から全面実施される新学習指導要領では「調べ学習」、「自学力の形成」などがスローガンとして挙げられ、「総合学習」枠への期待が持たれている。
そこで総合学習の一つの形として、ファースト・コンタクト・シミュレーション(以下FCS)というものを紹介したい。

2.FCSとは
 1979年、カリフォルニア州のカブリロ大学で文化人類学を教えていたジム・フナロ(Jim Funaro)は学生の講義に使えるネタを探していた。「異文化との交流」がテーマであり、「どのようにすれば全く異なる文化を持つ人々と分かり合えるの か」を考えさせ、シミュレーションにより「何がコミュニケーションの妨げとなるのか」を調べさせようとした。その時に考えついたのは「どうせなら異星人と であれば容姿も文化も何もかもが異なるのでよいのでは」ということだった。このアイデアは文化人類学者のグレゴリイ・ベイトスン博士が提唱したものであ る。
そこで学生に地球と異なる惑星を想定させ、その惑星上でどのような生物が発生しうるか、そして知的生命体にまで進化したときにどのような外見、言語、行 動様式、社会を持ちうるかを考えさせ、地球人とファーストコンタクトを行った際には相互理解の上でどのような障害が発生しうるかを、実際にシミュレーショ ンを行うことによって体験させた。
彼のこの活動は幾人かの彼の友人によって大きくなっていった。彼はSF作家たちの協力を得てCONTACTという組織を作り、現在では年に1回大会を開 いている。1983年に第1回大会が開かれたと言うから、今年ですでに20回目になる。ここには故カール・セーガン氏を始め多くの科学者も参加し、特に SETIがらみの研究も多く行っているNASAのエイムズ研究所は大きく関与している。この組織には文化人類学者や天文学者のみならず、生物学者、言語学 者、教育関係者など、様々な分野から人間が集まり、多面的な研究が行われている。SETIを進めるものもいるし、異星人とのコンタクト手順を開発しようと いう者、はたまた異星人とのコンタクト時に必要となる辞書を構築しようという者もいるそうだ。
日本では翻訳家の大迫公成氏がヨーロッパで行われた世界SF大会で行われたFCSのプレゼンテーションに興味を持ち、持ち込んだのが最初である。 1991年のことだそうだ。その後、組織化を行い、CONTACT Japanを結成。1994年からは2泊3日のCJ(CONTACT Japan)というイベントを行い、主にはそこでFCSを行っている。また2001年からはFCSのすそ野を広げるために1日でFCSの全てを体験できる イベントとしてDay Contact(DC)を行っている。また今年からはFCSを行う上での問題点を研究するAdvanced Contact(AC)が行われることになっている。
2002年のスケジュールとしては、AC1が2月に大阪で、DC4が6月に東京で、11月には2泊3日のCJ5が開催の予定である。詳しくは CONTACT Japanのホームページ(http://www.ne.jp/asahi/contact/japan/)を参照されたい。

3.FCSの流れ
3.1.FCSの概略
 FCSはかなり多くの作業を要するシミュレーションである。大きく分けると4段階あるが、まず「ワールド・ビルド」と呼ばれる異星人世界の構築がある。もし2つの異星人同士のコンタクトを行うなら、2つの地球以外の異世界を構築しなければいけない。
ワールド・ビルドは相当奥が深いが、たとえば惑星の表面重力が半分だったら、海陸比が異なっていたら、中心の恒星がG型でなかったら、または距離が1天 文単位ではなかったらなどなど、徹底的にやる場合には最初に初期条件を与え、そこから丸ごと一つの惑星世界を構築する。そのような世界ではどのような生命 進化が起こり、どのような生物相ができあがるのか。そしてもし知的生命体が発生するとしたならば、どのような姿をし、どのような生態をし、慣習やタブーは 何か、社会様式は、科学技術はどのような分野が進むのか・・・などを考え、決めていくのだ。様々な分野の知識が要求されることがわかると思うが、これだけ で1冊の本(※参考文献参照)になるほどだ。アメリカには「ワールド・ビルド」で単位の取れるコースがある大学もある。
続いて2つの種族が通信によって相手とやりとりをし、相手の情報を収集し理解につとめる「プレ・コンタクト」。SETIによって異星人が発見された後に 行われる活動であり、実際に通信文のやりとりをし、相手についての理解を深めることが目的のフェーズである。ただし超能力、超科学、超自然現象などは使わ ない。
プレ・コンタクトは幾つかのSETIがらみの解説本などで紹介されているように、まず出来る限り宇宙で共通の何かをもって、自分の存在を誇示するところ から始める。自分たちの種族が通信文を送る場合には、まず水素の禁制線である波長21cmの電波を使い、素数や円周率などの数学的基盤、そして元素の周期 律表などを送信するところから始めることになるだろう。受信した相手がそれを理解できれば四則演算、論理演算等を通してまずYESかNOを主張できるよう に基盤を整備する。そして長さ、重さ、時間にまつわる単位系を構築し、さらに自分たちの姿・大きさ・構成している物質、住んでいる惑星系、その他諸々の情 報を交換しあう。これを発展させ、お互いが相手のことを理解でき、さらに会ってみたいという話になれば、次のフェーズである「コンタクト」へと移行するこ とが出来る。忘れてはならないのは、交信相手の距離である。1回の交信に何十年もかかるような相手では、我々の寿命やシステムの継続性が問題となる。ま た、ここで相手の意図などを把握できなかったり、相手と会うメリットを確認できなかった場合は、そこでシミュレーションは終了することとなる。
そして実際に会う「コンタクト」。このフェーズでは実際に相手と会って話をする。ここで共通言語基盤というか、翻訳可能なほどまでプレ・コンタクト時に 話が進んでいれば楽だが、そこまで達していない場合には会っても結局はプレ・コンタクトの延長線上にしかならない。もちろんそれでも実際に会ってみないと わからないこともあるので、決して無意味ではない。
忘れてはならないのはその後に行われる最後のフェーズ「反省会」である。お互いが今回の設定を持ち寄り、まずワールド・ビルド部分で行われた設定を紹介 し、それには矛盾はないかを討論する。続いてプレ・コンタクト、コンタクトの両フェーズを通して、相手に何を伝えたかったのか、そしてそれは成功したの か、もし失敗して意図が伝わっていなかった場合には、何が原因だったのかを話し合う。そして次回のFCSにその結果を反映することが求められるのだ。

3.2.FCSの実例
 では2000年11月に行われたCONTACT Japan4(以下CJ4)と2001年に3回行われたDay Contact(以下DC)を例にして実際の流れを紹介してみよう。

3.2.1.CONTACT Japan4
「西暦2050年1月。人類は初めて異星人からのメッセージを受信した。それは核融合エンジンを使った可視光モールス信号とも言うべきものであった。この 技術に驚嘆した人類は、早速コンタクトを行うため、太陽系開発機構(SSDO)の下部組織として異性文化交流委員会(ETCEC)を設立。ファーストコン タクトへの準備を始めた・・・。」

2泊3日で行われたCJ4は、このような設定で始まった。その時間的な制約から「ワールド・ビルド」部分はプロのSF作家にお願いし、「プレ・コンタクト」から始まった。異星人側の設定はカナダのロバート・J・ソウヤー氏が、地球人側の設定は野尻抱介氏が担当した。
CJ4におけるFCSは地球よりほぼ1光年離れたオールト雲の中に突如異星人のものとおぼしき宇宙船が出現し、信号が送られてきたところから始まった。 参加者約80名は地球人側がB、C、Dの3チーム、異星人側がS、T、Uの3チーム、計6チームに分かれ、BとS、CとT、DとUがそれぞれコンタクトを 行った。とはいえ参加者には互いにどのチームとコンタクトするのかは知らされていなかったが。
さて、参加チームは相手の正体、目的などを通信のやりとりによって聞き出していくしかない。それも当然のことながら日本語や英語が通じるわけがないの で、まずは共通の通信ルールの構築から始めないといけない。四則演算や論理演算を定義し、相手の使用する記号や単位が納得できたら、それを応用した通信文 を送り・・・ということを繰り返して、相手の姿、体の構成物質、目的を聞き出すということをした。
通信文の中身は各チームで協議の上作成していく(写真1)。議事進行役として議長が、議事内容の記録を書記が行う。またそれとは別にスーパーバイ ザー(以下SV)と呼ばれる役職の人間が一人いる。SVは完成した通信文を相手チームに手渡す役目を負っており、相手チームのSVと共に通信文の内容の意 図が何であるか、どういうシチュエーションで作成されたかを確認する。ただし、通信文のそのものについての説明は一切しない。それは各チームを構成するメ ンバーが自分たちで考えなければならない。またSVはチームがやろうとしていることが、その世界の技術水準レベルで可能かどうかも判断する。従って、突拍 子もない設定が作られそうになったり、妙な行動が行われようとした場合には議長以下、全員に「待った」を掛けることが出来る。
このようなシステムの下で相手チームとのやりとりが行われた訳であるが、少なくとも私の所属していたD-Uチームは成功したとは言い難い。相手のことが コンタクト直前まで理解できなかったばかりか、目的を勘違いして一触即発の状況に陥ったし、まともな会話はほとんど出来なかった。

3.2.2.Day Contact

 またDCは2001年に3度行われたが、全て同じ初期設定の下に行われた。設定は以下の通りである。

「あなた方は母星から5光年離れた惑星系に向かう宇宙船に乗っています。何故その星系を目指しているのでしょう?どんな種族(姿、大きさ、寿命等)で、どんな習慣・タブーなどを持っているのでしょう?そして人数はどれくらいなのでしょう?」

10時に始まり、14時頃までかかって、自分たちの姿や目的を設定する。つまり簡易ワールド・ビルドである。その後1時間ほどかけて簡易プレ・コンタクトを行い、15時から16時にかけて簡易コンタクト、最後に1時間の報告会を行った。
参加者は2つのチームに別れ、独自にこれらの設定をこなしていく(写真2:DC2での様子)。そして片方のチームは先に惑星系に辿り着いており、もう片 方のチームは後でやって来るというシチュエーションが与えられた。DC1の際に私の属したチームが行った設定は「母星から迫害されて逃げ出した」であり、 あとで辿り着いた方のチームであったため、プレ・コンタクト中は
「一緒に住まわせてもらえるのか?もし交渉が決裂した場合、次の惑星系を目指す燃料はどうやって調達するのか?」
など様々な問題点が出た。さらにコンタクト時にも、こちらは肉体の物理的接触を嫌うという設定であったため、積極的な接触を好む相手側との摩擦が起こったりした。


4.総合学習としてのFCS

 1991年4月、当時のブッシュ大統領は教育改革を提言し、そのうちの一つとして次のような目標が挙げられている。
「2000年までにアメリカの生徒は4年・8年・12年の過程を終えるときに、英語・数学・科学・歴史・地理を含んだ問題に挑戦し、その能力を示さなけれ ばならない。また全てのアメリカの学校は、生徒全員が責任ある市民となり、さらなる学習をし、現在の社会経済で創造的な職業につく準備ができるように、自 分の知性を正しく使えるようになることを保証しなければならない。(※COTI Jr.邦訳版より)」
アメリカのCONTACTは、科学と数学を中心に様々の分野において重要な概念と技術を扱うカリキュラムとして、 FCSを提案している。このカリキュラムはCOTI jr.と呼ばれ、8年生、つまり中学2年生のレベルで行われるように設計されている。実際、すでに3章で述べたように、FCSを行うには様々な知識を、た だ持っているだけでなく活用することが要求される。また他人とディスカッションすることにより考え違いをしていた部分は是正されるであろうし、単にテスト を行うよりもより印象に残る学習が可能であろう。  この試みはすでにアメリカ国内ではバージニア州とメリーランド州の二つの学校やその他の教育現場でテスト的に運用されている。またオーストラリアの中学 校でも同様の試みが行われており、カリキュラムとして採用されているそうである。
日本国内に於いてもワールド・ビルド部分だけを大学の講義で行った例がある。現時点では琉球大学でCONTACT Japanメンバーの前野昌弘氏が授業でワールド・ビルドを行っている。内容は近々CONTACT Japanのニュースレターで発表される。また大阪教育大学の福江氏も同様の試みを行おうとしているようである。そのうち実践レポートが掲載されるものと 思われる。
さて、今回FCSを紹介したのは、日本でもこの試みを広めようという意図があったからだが、特に総合学習教材として適していると思われたからである。先 にも述べたが天文学を始め、生物学、物理学、数学、経済学、社会学など様々な範囲の知識を要求される上、それを実際に使用するという体験が出来、近年問題 となっているクラスメイトのことをあまりよく知らない、という問題にも力を発揮するであろう。さらには自分の意見を他人に伝えるというプレゼンテーション 能力の育成にも使えるだろう。
ワールド・ビルドでは天文学・地質学・生物学などが、プレ・コンタクトでは同じく天文学・物理学・数学・生物学・社会学など、そしてコンタクトでは文化 交流や国際理解など、様々なフェーズで様々な学習が可能である。もちろん全てをやらずに、ある程度限定したシチュエーション下で特定分野に偏った学習を行 うことも可能となるとは思われるが、FCSを取り込む最大のメリットを殺してしまいかねないので、特定分野に学習内容が限定されてしまうシナリオを作成す るのは意味がないと思われる。
さて、このようにして行われる授業では、具体的には先生がSVとなり、クラスから選出された議長及び書記の下、議論が展開されるだろう。チームはクラス 単位が望ましいかもしれない。同じ学年の2クラスで行うか、もし可能ならばクラスを半数に分けて実行するのも良いだろう。
また発展系として、同じ学校内のクラス同士だけでなく、電子メールやウェブなどを始め、インターネットをフルに活用し、他の学校のクラスとFCSを行う ことも可能となるであろう。英語さえ出来れば海外の学校とのやりとりも可能である。国際理解の一助にもなるのではなかろうか。
具体的な動きも出てきている。3月には西はりま天文台公園にて西はりまの職員とCJのスタッフとによるFCSが行われる。これは西はりまにおいてカリ キュラムとして採用することが出来るかどうかを判断するための予備調査的なものでありその如何によっては本格的に採用され、実例が出てくる可能性もある。

5.まとめ
 最後に述べておきたいのは、あくまでもこれは総合学習教材としての一つの可能性である。他にも優れた教材となりうるものは数多くあると思われる。しかし これだけ様々な知識を要求され、しかも各フェーズに於いて判断を下していかなければならない形態の学習はなかなかないのではないだろうか?
今後は海外の例を収集し、紹介していけたらと思う。
またこの場をお借りして、文章のチェックを快く引き受けてくださったCONTACT Japan代表である大迫公成氏、そして写真を提供していただいたCONTACT Japanに感謝の意を表したい。

2002年正月、映画「コンタクト」を観ながら。

参考文献
・CONTACT Japan2~4 アフターレポート
・CONTACT Japan ホームページ(http://www.ne.jp/asahi/contact/japan/)
・「World-Building」 Stephan L. Gillett (ISBN0-89879-707-1)
・COTI Jr.の邦訳版(http://mb113.moleng.kyoto-u.ac.jp/~cj/cj1/cj1_prog2/cj1_p2cotijr.html)
・「ファーストコンタクト」 金子隆一 文春新書
・「宇宙生物とET探査」 大島泰郎 朝日文庫
・「SETI@homeファンブック」 野尻抱介 ローカス

特集「20世紀の天文十大ニュース」

●ブラックホールの予想と観測
 X線源であるはくちょう座X-1はその強度が約5日で変化し、青い超巨星と連星系をなしている。これは降着円盤から発せられたX線であり、その中心には 光を発しない大質量天体が潜んでいると考えられた。このようなX線天体は現在では数多く見つかっており、いずれも中性子星またはブラックホールが関与して いると考えられている。
また、クエーサーの発見以来、銀河の中心核にはブラックホールがあるのでは?と考えられるようになり、特にそのスペクトル観測の結果は太陽質量の数十万 倍から数百万倍のブラックホールの存在を示唆するものであった。1995年、日本の三好真らは野辺山及びVLAによる水メーザーの観測結果から、M106 の中心部分のガスが非常な高速運動をしていることを発見した。そして中心からの距離から考えると、太陽質量の約100万倍ほどの質量が、数光年(?)とい う大変狭い領域に存在していることが確認された。この結果から、中心部にはブラックホールが存在している事が証明された。

●クェーサー・活動銀河の発見
1950年代に多数の電波源が発見され、その中に光学的には星と区別できないが、強力な電波を発するものがある。1960年、トマス・マシューズとアラ ン・サンデージはこれらを特殊な恒星だと考えたが、その特徴があまりにも恒星からかけ離れていたため「準恒星状天体」略して「準星」と呼んだ。クェーサー という名前も英語の「quesi-stellar object」の「quesi-stellar」に由来する。また頭文字を取り「QSO」とも書く。
1963年に、3C48、3C273という天体のスペクトル観測したシュミットは、そこに見られた不可解なスペクトルを異常に大きい赤方偏移のためと考 えたが、それには膨大なエネルギーが必要であり、ここに全く新しい天体としてクェーサーが登場する。大きな赤方偏移、電波からX線までの強力な放射、激し い時間変化等々から、クェーサーの正体について様々な解釈がなされたが、現在では非常に遠い天体という説に落ち着いている。セイファート銀河、ブレーザー などクェーサーに準ずる銀河もたくさん見つかり、銀河中心核の活動は降着円盤を基礎とした統一理論が構築されるまでになった。

●大規模構造とダークマターの存在
 1927年、ヤン・オールトにより銀河系中の恒星のディスク面に対する上下運動の観測結果が発表されたが、これは当時知られていた恒星及び星間ガスの質 量のみから予想された値を超えていた。観測結果から得られた結論は、銀河系の質量は光学質量の倍は必要である、というものであった。これを当時「行方不明 の質量」と呼んだ。
続いて系外銀河の回転曲線が観測されるようになると、銀河の質量は光学質量の10倍ほどにならないと説明がつかなくなってきた。これは「行方不明」というにはあまりにも多すぎるため、名前を変更し「ダークマター問題」と呼ぶようになった。
その後X線銀河団の観測から、ダークマターは可視質量の~100倍にもなることが予想されている。
ダークマターの候補としてはバリオン物質(ブラックホール、中性子星、褐色矮星など、観測されていない天体)または非バリオン物質(ニュートリノ、アク シオン、Susy Perticle)が候補に挙げられているが、未だに謎のままである。また宇宙の大規模構造(大域的構造ともいう)を形成するためには、3K宇宙背景放射 から予測される「ゆらぎ」の大きさでは不十分であり、その点からも現在、宇宙進化を考える上でダークマターの存在を欠かすことは出来ない。
この宇宙の大規模構造は「銀河が一様ではなく偏在している」ことや、1970年代からコンピューター・シミュレーションの結果などからも指摘されてい た。これが1980年代にはいると、CCDカメラの登場によって銀河の距離を求めるのに必要なスペクトル観測の時間が短くなり、「宇宙の地図」を作る準備 が整った。1978年にはスティーブン・グレゴリーらが幅2億光年にもなる超銀河団を発見したのを始め、1981年にはロバート・キルシュナーらがうしか い座方向にさしわたし2億5000万光年にも及ぶボイドを発見した。そして1986年にはマーガレット・ゲラーらにより「銀河の地図」が発表され、グレー トウォールなどが見いだされた。
一方COBEの結果からは「宇宙はかなり一様」であることが示唆されており、この大規模構造がどのようにして形成されたのかは21世紀の課題である。

●宇宙背景放射の発見とビッグバン宇宙論の確立
 前世紀まで神の領域であった宇宙論は、1916年に発表されたアインシュタインの一般相対性理論によって初めて科学の分野に入ってきたといえる。様々な 宇宙モデルが論じられる中、1946年ジョージ・ガモフが宇宙はファイアボール(後にフレッド・ホイルによってビッグバンと名付けられる)より始まり、現 在数度Kにまで冷えてきていると予測した。そして1965年にアーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンにより、宇宙のあらゆる方向から3度Kに相当する 電波がやってきていることが発見され、これこそビッグバンの名残であると考えられるようになった。
その後、スティーブン・ホーキングによる「量子宇宙論」や、アラン・グース、佐藤勝彦らによる「インフレーション宇宙論」などで様々な問題を修正しながら、ビッグバン宇宙論は宇宙進化の根幹をなす理論として支持されている。

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