今日は会社を定時で上がって有楽町のマリオンに入っている朝日ホールへ走ります。目的は18時半から始まる「JAXAシンポジウム2009」へ の参加です。実は、ずいぶん前に申し込んでいたのですが、そのときに返ってきているはずのメールが見あたらない…仕方がないのでWebサイトで場所を再確 認し、会場に向かいます。途中、最も会場に近いとされていた地下鉄の7番出口が封鎖されているというトラブルにも巻き込まれましたが、何とか開始5分前ま でには席に着くことが出来ました。なんか満席状態で、ものすごく人が多かったんですけどね、会場。

さて、偉い人の挨拶があり、JAXAの昨年度の活動内容がビデオで流された後、今年度の事業計画が報告されました。とは言っても大きいのは国際宇宙ステー ションの「きぼう」モジュール完成、2名の宇宙飛行士が今年度もこれから宇宙へ行くこと、そして、この宇宙ステーションへの無人補給機「HTV」の初号機 が9月11日に打ち上げられる予定になっていることくらいでしょうか。
JAXAとしての新規の衛星打ち上げは来年度までありません。今年は内閣府と防衛省が主管の情報収集衛星打ち上げくらいじゃないですかね?私が今聞いている範囲だと。

JAXAの話に戻しますと、HTV初号機は食料・衣料・船外実験装置を輸送する予定で、国際宇宙ステーションとは自動ドッキングせず、ロボットアームで掴んでもらい、ドッキングさせるという手法を採るようです。
そして既存に衛星に関しては、直近に打ち上げられた「いぶき」は5月に公開した観測データが地上のものと傾向があっていたため、おそらくデータの信頼度は 大丈夫なんだろうと判断されているそうです。今後はキャリブレーションをもう少しやり、観測精度をあげていく努力をするんだそうです。

先日、宇宙からの七夕メール送信実験を行った「きずな」は、今度は7月22日に、硫黄島から皆既日食の中継(あくまでも情報の伝送実験)をやるとのこと。

来年度以降には新しい衛星の打ち上げが予定されていて、一つはGPSを補完する準天頂衛星、そしてもう一つは金星探査機PLANET-Cです。現在、両衛星とも組み立てと試験が行われている最中で、大きな遅れはないとのことでした。

続いて第2部はトークセッション。フリーアナウンサーの草野満代さんが聞き手となり、宇宙飛行士の向井千秋氏、天文学者の中川貴雄氏とトークを行いました。
中川氏の話は、すみませんが割愛させてください。とりあえず彼が話したのは
1)天文学は「我々はどうやって生まれたのか?」「人類はひとりぼっちなのか?」を解き明かす学問である
2)日本の宇宙科学は様々な探査機や天文衛星で支えられている。特に天文衛星は現在「ひので」「あかり」「すざく」の3衛星が様々な波長で宇宙の謎を追いかけている
3)ダークマターの正体は皆目見当もつかない
4)今後は電波天文衛星「ASTRO-G」、X線天文衛星「ASTRO-H」の計画が承認されている。氏個人としては赤外線天文衛星「SPiCA」計画を策定中

というあたりです。またそのうち詳しく書くかもしれませんが、今日のところはこんなもんで。

さて、時間を少し巻き戻して向井氏の話をしましょう。
氏が室長を務める「宇宙医学生物学研究室」は2007年に出来たばかりの新しい研究室です。それまではNASDA以来、宇宙飛行士を元気に送り出して、無 事に帰ってこさせるという体調管理の部門はあったそうですが、宇宙での知見を地球での医療などに役立てようという部署はなかったそうで、それを設立したの だそうです。

この研究室の研究領域は以下の通りです。
1)生理的対策
2)精神心理支援
3)放射線被曝管理
4)軌道上医療システム
5)宇宙船内環境

1)について。地球の10倍くらいの速度で骨粗鬆症が進行するため、宇宙飛行士は地上では健康な状態でも、宇宙に行くと病気もどきになる。戻ってくると病 気もどきから健康に戻る。これを短期間で見ることができるので、これを研究すれば骨粗鬆症の解決方法が見つかるかもしれないと言います。
他にも高齢者健康管理、健康増進への活用、予防医学への応用などが考えられる分野です。

2)は精神心理面対応に応用できます。例えばストレス対策への応用、不眠対応などですね。
3)は航空機の国際路線に搭乗しているパイロットやキャビンアテンダントの健康管理に応用できます。同じ様な状況にあり、白内障の発症が職業病となっている部門でもあるそうですので。
4)なら遠隔地医療。宇宙には医者を常駐させられないので、地上から健康管理などを行う必要があります。これは医者が常駐していない離島などでも使える技術になります。
5)は、バクテリア環境の制御をどうするのか?などが対象になります。飛行士の抵抗力が落ちると、善玉菌でも悪さをしてしまうため、例えば宇宙食の研究から「食の安全・安心」などの研究が出来ます。それにより「安全な食品製造」「健康機能食、災害食」「環境に優しい容器」などの開発に繋がるでしょう。
また他にも「産業保険の充実」「長時間勤労者の健康管理」「有害環境リスクからの保護」「メンタルヘルス対策」など、閉鎖空間に起因する様々な問題への対策になるはずです。

これらを実証するため、現在宇宙に行っている若田宇宙飛行士も実験に参加しているそうで、「ビスフォスフォネート(骨粗鬆症の治療薬)で予防できるのか?」や、「軌道上遠隔医療の技術検証」などが現在進行形で行われています。
いずれにせよ、宇宙に人間を送ることは、ものすごいお金がかかるのも事実ですが、こういった地上ではなかなか出来ない状況が、我々の生活を補助するのに新 しい知見をもたらし、必ずや使った分大金は返ってくるということが、大変重要な点であることを認識しなければいけません。