カテゴリー: 写真・CG

フリーソフトだけで何とかする衛星画像処理3/3

遂に最終回です。ではパンシャープン画像を作成していきましょう。

まずはPRISMの画像「パリ高解像度.bmp」を開きましょう。

これに第2回で作成した「パリ・カラー.xcf」を重ねるのですが、注意点が2つあります。
まず1点目。それは解像度が異なっている、という点です。PRISMの画像はAVNIR2の画像よりも高解像度です。にもかかわらず、撮っている範囲は半分しかありません。実はPRISMはAVNIR2に比べて縦横、それぞれ4倍ずつの解像度を持っているのです。従って、「パリ・カラー.xcf」を縦横4倍に引き延ばしてから合成しなければいけません。ただでさえ670MB以上もあるものを面積で16倍に引き延ばすと…画像サイズがどの程度になるのか、恐ろしくて考えたくもない事態ですよね。

そこで2点目。必要なところだけトリミングして合成する、ということが必要になります。ですから

「どの範囲を合成したいか?」

を明確に決めておく必要があります。決められたらまずは切り取りを行いましょう。今回は比較的大きな範囲を切り取ることにしましたので、次のような手順を採用しました。

まずメニューの「画像」-「キャンバスサイズの変更」を選びます。すると子ウィンドウが表示されます。


ここで「幅」を変更しました。今回はあとでわかりやすいように8400にします。選んだサイズの四角い枠がサムネイル上に表示されますので、これをマウスでドラッグして位置を決めます。決めたら「サイズ変更」ボタンを押してトリミングを実行します。

ここで一旦保存します。この画像にカラー画像をかぶせるので、別名で保存する方が良いでしょう。

次に、カラー画像側の切り抜きを行います。カラー画像は解像度が4分の1ですから、幅を2100にしてやればいいわけですね。そこでメニューの「画像」-「画像の拡大・縮小」を選択しましょう。すると「画像の拡大・縮小」の子ウィンドウが開きます。

ここで、幅を4分の1の値である2100にして「拡大・縮小」ボタンを押します。


これでサイズが小さくなりましたね?

ここで「選択」-「すべて選択」で全体を選択します。

続いて「編集」-「コピー」で画像をコピーします。

これをカラー画像に貼り付けましょう。


次にこの貼り付けた画像の不透明度を調整しましょう。


そうすると、背景が透けて見えるようになりますので、貼り付けた画像の位置を調整し、下の画像ときっちり重ね合わせます。


場所が大体合ったら、「フローティング選択範囲」をレイヤーにするため、下の欄にある一番左のアイコンをクリックします。

ここで、先ほど貼り付けた画像より少し大きな範囲を選択します。

ここで「画像」-「選択範囲で切り抜き」を選択して下さい。すると、選択した範囲だけが残ります。

さて、これで準備出来たわけですから、あとはこれを拡大した上でモノクロ画像に貼り付けるわけです。

メニューの「画像」-「画像の拡大・縮小」で、4倍の値を入れます。今回はサイズが大きい旨の警告が出ましたが、これは無視して「拡大縮小」を押します。

続いて、この画像を「編集」-「コピー」でコピーします。

そして元のサイズに戻したモノクロ画像に「編集」-「貼り付け」で貼り付けます。

するとこんな感じで貼り付けが完成します。一旦、ここで保存しておきましょう。

さて、重ね合わせの位置調整を行います。これは先ほどの手順と同じで、レイヤーの不透明度を変更し、場所を合わせます。最終的には若干の回転が必要になります。
「レイヤー」-「変換」-「任意の回転」で子ウィンドウを表示します。

ここで今回は「-0.13」という値を入力し、反時計回りに0.13度回転させました。


これで一致しました。レイヤーをオン、オフにした際の画像を下に並べてみました。キッチリと重なることが分かります。

毎回この回転角度で良いかどうかは不明ですが、大体の目安になるのではないでしょうか?

あとはカラー情報だけを高解像度のモノクロの背景画像に転写するだけです。それは以下の手順で行います。

現在は「モード」が「標準」となっていますが、これを下から2番目にある「色」へと変更します・


これで「パンシャープン画像」の完成です。

それでは、2カ所程をピックアップして、AVNIR2のカラー画像、PRISMによるモノクロ画像、そして今回作成したパンシャープン画像を見てみましょう。

AVNIR2カラー PRISMモノクロ パンシャープン
コンコルド広場付近

 

AVNIR2カラー PRISMモノクロ パンシャープン
モンスリー公園付近

以上で今回のレポートは終了です。もしパンシャープン画像を作成する機会がありましたら、是非ご活用頂ければと思います。

最後になりましたが、このレポートの公開を快く承諾下さいましたJAXAご担当者にお礼を申し上げます。

Categories: 写真・CG 宇宙開発

フリーソフトだけで何とかする衛星画像処理2/3

それでは2回目です。
今回はパンシャープン画像を作るために、まずはカラー画像を作りましょう。AVNIR2の3枚の画像を使います。どの画像から開いても良いのですが、「GIMP」を起動した後、今回は青の画像を最初に開きましょう。

 

開けられましたら、あと、緑と赤も開きます。

この3枚を一気に1枚の画像にカラー合成します。その方法ですが、「パリ青.bmp」の画面を見て下さい。メニューの「色」の中にある「色要素」-「チャンネル合成」をクリックしましょう。

 

 

すると、チャンネル合成の子ウィンドウが表示されます。

この画面で、「赤」の欄に「パリ赤.bmp」、「緑」の欄に「パリ緑.bmp」をそれぞれ選択します。下のような感じですね。

そして「OK」を押すと、変換が終わります。簡単でしょ?そして変換が終わりましたら、「パリ・カラー.xcf」というファイル名で保存しておきましょう。実はこの段階で、作業中の画像サイズが670MBを越えています。恐ろしいサイズですね。実は作業中に一度「GIMP」がフリーズしてしまいまして、やり直しせざるを得ませんでしたので、それを防ぐためにもメモリが少ない人は小まめに保存することをお薦めします。

 

 

でもなんだかくすんでますよね…そこでここからはもっとキレイな画像になるよう処理をしてみましょう。

今度はメニューの「色」-「レベル」を選びます。

すると「レベル」を調整するためのウィンドウが開きます。


「チャンネル」が「明度」になっていますが、これを「赤」に変更してみます。すると、左端の方は色がない状態になっているのが分かります。そこで、矢印をマウスでドラッグして動かします。
「緑」も「青」も同じ様に動かしてみます。


その結果が下の画像です。全体的に暗くなりましたね。でもちょっと暗すぎますか。そこで、今度は明るくしてみましょう。

同じく「色」-「レベル」を選択し、今度は右端の三角と、真ん中の三角の場所をドラッグして動かします。また、テキストボックスのなかに数字を直接入力しても構いません。私は真ん中のエリアを「1.8」、右端のエリアを「240」としました。その結果が下の画像です。かなり明るく、見やすくなったのではないでしょうか?郊外に広がる畑の緑色もキレイになりましたよね。

ここまでで基本的な処理はあとは好みの問題で色を細かくいじってみてください。緑をもっと鮮やかにしたいとか、土の色をキレイに見せたい、水の色をもっと青く等、自由に色調整をしてみましょう。「GIMP」は様々な加工ができるようになっています。自分のイメージ通りの画像になるまで、何度でも調整してみてください。ただし、定期的にファイルを保存するのを忘れずに。

ちなみに私の最終形は下の画像です。

次回、最終回はいよいよパンシャープン画像を作成します。
 

Categories: 写真・CG 宇宙開発

フリーソフトだけで何とかする衛星画像処理1/3

「フリーソフトだけで何とかする衛星画像処理」全3回、それでは、始まりです。

まず、今回私の作業した環境をご紹介します。

パソコン…3年ほど前に自作したもの。今の最新型に比べれば、かなり見劣りのするスペックです。
OS…WindowsXPのHome Edition
メモリ…2GB

衛星画像の加工に使用したのは「GIMP」というフリーの画像処理ソフトです。いわゆるPhotoshopの様なソフトウェアですが、そこまで高機能ではありません。10年前に発売されたPhotoshopのVer4よりは高機能かな?一般向けのPhotoshop Elementというソフトもありますが、それよりも高機能な気がします。
今回はこの「GIMP」を使用しての処理の手順を紹介しますので、お持ち出ない方は下記より入手されることをお薦めします。

GIMP for Windows

さて、JAXAからは陸域観測技術衛星「だいち」が撮影した画像をご提供いただきました。今回はパリの画像を例にご紹介していきますが、2種類の画像をご提供いただきました。

1)カラー画像用の解像度の低いAVNIR2という機器で撮影した画像(図1)
2)モノクロだけど解像度の高いPRISMという機器で撮影した画像(図2)

図1 図2

この2種類を使います。
先にネタばらしをしますが、解像度は図3を見てもわかるように、同じ場所でもこれだけ異なります。そこで、解像度の高いPRISMの画像に、AVNIR2の色情報だけを合成することにします。こうして作成された画像は
「パンシャープン画像」
と呼ばれます。

図3

さて、図1、図2で、「IMG」という言葉の付いているのが画像ファイルです。残りのファイルは付加情報のファイルですので、今回は使いません。というか、使い方を訊かれても私も答えられないんですけどね。
しかし、よくよく見てみると図2の方はモノクロ画像なので1枚だけ画像ファイルがあって…というのはわかるのですが、図1の方には4つもファイルがありますよね?実はこれらは以下のようになっているのです。

IMG-01…青一色で撮影したモノクロ画像
IMG-02…緑一色で撮影したモノクロ画像
IMG-03…赤一色で撮影したモノクロ画像
IMG-04…赤外線で撮影したモノクロ画像

何と、光の3原色+1色が、バラバラの画像ファイルになっているのです。ですから、パンシャープン画像を作るには、まず最初にカラー画像を作るところから始まなければいけません。最新版のPhotoshopを使うと、この辺はソフトが勝手に処理して自動でカラー画像にしてくれるのですが、残念ながら「GIMP」にはそのような素晴らしい機能がありません。手作業で作る必要があります。

そしてもう一つ。何と、素晴らしきPhotoshopと異なり、「GIMP」は提供された画像を直接読み込む事も出来ません。というか、いろいろ試してはみたのですが、読み込むことが出来ませんでした。
そこで!
もう一つ、別のフリーソフトを使って、「GIMP」が読み込める形式に変換します。それが「RSP」というソフトです。

リモートセンシング画像処理ソフトウェア「RSP」

インストールした「RSP」を起動すると図4の様な画面になります。このメニューの一番左端の機能を使います。まずはAVNIR2のデータから変換してみましょう。

図4

 

メニューの「ファイル」をクリックし、「フォーマット変換」を選ぶと、子ウィンドウが開きます(図5)。続いて子ウィンドウの「ALOS」を選択し、さらにその中にある「AVNIR-2」を選択します。

図5

 

すると変換するファイルを選択するダイアログが現れますので、まずは青の画像から変換してみましょう。青の画像はIMG-01ですので、これを選択します。続いて保存するファイル名を入力するのですが、わかりやすくするために、「パリ青.bmp」という名前にしてみました。これで「保存」ボタンを押すと変換が行われます。

 

図6(あ、フォルダ間違えてる…)
図7

 

同じようにIMG-02、IMG-03も変換します。今回は使わないのですが、私はIMG-04も一応変換してみました。

続いてPRISMの画像も変換しましょう。メニューの「ALOS」の中から、今度は「PRISM」を選びます。あとは「AVNIR2」と同様です。今回は「パリ高解像度.bmp」として保存しました。

図8

それぞれの画像を見てみましょう。するとどれも全てモノクロ画像であることがわかると思います。そして驚くのはそのサイズです。AVNIR2の画像は1枚あたり73MB、サイズも8726ピクセル×8610ピクセルと、7500万画素となります。そんなデジカメは市販されてないぞ!とツッコミをいれたくなるサイズです。PRISMに至っては17789ピクセル×17313ピクセルの3億画素超。ファイルも300MB。ちょっと処理するのが大変なサイズです。

しかしこれでようやく「GIMP」で読み込める形式に変換することが出来ました。第2回では、これらの画像を利用して、実際にパンシャープン画像を作成する前に、カラー合成を行います。
 

Categories: 写真・CG 宇宙開発