2月17日(水)。この日、
「ちょっと紹介したいサイトがあるんだよね。意見交換しない?」
と言われ、内閣府の宇宙開発戦略本部へと行ってきました。実は昨年の11月に一度ご紹介があって訪問したことがあり、今回は2回目の意見交換となります。本当は、こちらで考えているプロジェクトがもう少し進んでからの方行きやすいのですが、3ヶ月もご無沙汰してしまっているので、一度顔を出しておく必要性も感じていましたから、丁度良いタイミングだな、と思ったのもありまして。
さて、この時に紹介されたのが「GEO Grid」というサイトです。扱っているのは経済産業省系の衛星搭載観測装置で得られた画像です。ちょっと意味がわかりにくいでしょうから、簡単に説明してみます。
人工衛星には「ひまわり」のような気象衛星、衛星放送のための放送衛星、海外との中継やインターネット通信に利用される通信衛星、自分の位置を調べるためのGPS衛星、宇宙の観測に使われる天文衛星等、その用途に応じて打ち上げられた様々な種類の衛星があります。
その一分野として、地球の表面の様子を観測する地球観測衛星というのがあります。有名なのはランドサットや、日本のJAXAが打ち上げた陸域観測衛星「だいち」などです。
これらの地球観測衛星の画像は有償で販売されていることが多いのですが、我々もGoogle MapやGoogle Earthといったソフトで、パソコン上では無料で見ることが出来、利用する人は利用しています。他にも「だいち」は綺麗な画像を「だいちギャラリー」というサイトで約700枚を無料公開しています。
しかし、Googleのものはいつ撮影された写真なのかがわかりません。都市部は比較的更新されているようですが、そうでないところは更新頻度も低いようです。従って結構古いものだったりすることもあります。
「だいちギャラリー」は写真自体は美しいのですが、解像度も低く、欲しい場所も見つからなかったりします。ちなみに「だいちギャラリー」画像は、現在一人で処理をしていらっしゃるとのことなので、撮影される画像の量に対し、処理が追いついていないというのが現状です。
実は「だいち」は全ての画像をみることの出来るサイトがあります。それは「ALOS情報システムWWWサービス」というサイトです。しかし、ここで表示されるのはモノクロもしくは擬似カラーの画像のみです。「だいち」は赤外線、赤、緑、青の4波長で撮影を行っていますので、赤、緑、青の三色を使えば綺麗なカラー画像が得られるのですが、このサイトは専門家向けのものであるために、赤外線、赤、緑の三色による画像となっています。従って、一般の人が見たいようなカラー画像ではないのです。
他にもいくつかの衛星が観測した写真を公開しているサイトはあるのですが、研究者向けに、しかもID申請が必要だったりと、使い勝手は決して良いとは言えませんでした。
実は、そんな状況を知っていましたので、何とか新しい画像まで含めて、全画像を一般人向けのカラー画像として提供する、出来ればユーザーが見たいエリアを選択したら、そこのエリアを撮影した画像が一覧で出てくるようなサイトが作れないかなぁ? と考えていたのです。
そんなことを考えていた矢先、今回紹介された「
GEO Grid」というサイトは、JAXAではなく経済産業省が主導して打ち上げた観測機のデータを、同じく経済産業省系の独立行政法人 産業技術総合研究所が公開しているのです。現時点では大体2000年以降に撮影されたASTER(搭載衛星はTerra)、PALSAR(搭載衛星は「だいち」)の画像をモノクロもしくはトゥルーカラーで検索・閲覧できます。
またサムネイルをクリックすると画像の詳細を見ることが出来、しかもそのページからJPEG、KML、KMZでのダウンロードが出来るようになっていて、ネットに繋がっている環境ならKMLで、繋がっていない環境ならKMZでGoogle Earth上に画像を表示できます。
しかもASTERデータは4日前の撮影分までが載っているという、結構なすぐれものサイトです。
残念ながら、サイト利用(画像の利用も含めて)には
「どういった研究に利用するのか?」
を明記した上でID申請が必要なので、あまりオープンではありません。その上、やはり研究者向けのUIになってしまっていますので、例えば画像検索に使用する撮影時刻は世界標準時で入力しなければいけませんし、観測機の細かい設定を行わなければいけませんので、一般人には使い勝手の悪いものになってしまっています。
でも、こういったサイトが公開され、しかもJAXAの衛星も含め、1980年代後半から打ち上げられている国産衛星の写真がいつでも使えるようになることは、国民に対して様々なメリットを与えてくれるはずです。
経済産業省は、
「販売されている高度情報を含んだデータが売れなくなるのでは?」
と危惧して公開には慎重なのだそうですが、そもそもこういうものが存在しているという国民が一体どれだけいるというのでしょうか?知る人が増えなければ利用者も増えず、高度データを購入する人も増えませんから、まずは裾野を広げるためにも、JPEG画像やKMLデータ程度は無償公開に踏み切って欲しいと思います。