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DAICON7レポート第0日

当たり前の話ですが、1年ぶりのSF大会です。今年は「第47回 日本SF大会 DAICON7」ということになりました。お久しぶりの方々も多くいますし、宇宙作家クラブのメンバーやCONTACT Japanメンバーも含め、ちょくちょくお会いする方々も。

さて、そんなわけでDAICON7の参加レポートを書いてみたいと思います。

 

2008/8/22(Fri)

SF大会に先立つオプショナルツアーが行われました。今回のツアーは「大阪の陸、水、宇宙、地下を網羅する」みたいな感じのツアーでした。スケジュールは以下のような感じです。

13時  シティプラザ大阪集合
13時半 水陸両用バス「チャレンジャー号」で大阪遊覧の旅へ
15時頃 大阪市立科学館着。自由行動
17時  全天動画上映会
18時半 「堀晃と行く梅田地下オデッセイ」 スタート
19時半 懇親会

まずは堺筋本町駅から少し歩いたところにある「シティプラザ大阪」へ。ここに13時までにたどり着くため、7時前に本厚木の家を出発。小田急で小田原に向かい、そこから8時9分初の新幹線「ひかり」で新大阪まで向かいます。新幹線の中では相変わらず仕事をやっていたわけですが。

さて新大阪に到着しますと、先月と異なりかなり涼しくなっています。あとで訊いてみると盆明けからは涼しくなっていたのだとか。これはありがたいと、大阪駅付近で買い物をしたあと、徒歩で大阪市立科学館に向かいます。夕方には再度やってくるわけで、私の名前でいろいろと申し込んでいる兼ね合いもありますから挨拶しておく必要があるだろうと。

その後、一旦大阪事務所に立ち寄って必要なデータを引き渡したあと、徒歩でシティプラザ大阪を目指します。

 

ここで堀晃氏とばったり。ちょっと話をしたあと中に入り、受付を済ませます。スタートは13時半という事でしたので少し待ち、やってきた水陸両用バスとやらを皆で撮影しまくり、と。

 

基本はトラックだそうで、それを水陸両用に改造したのだそうです。名前は「チャレンジャー号」。たぶん私だけではなく、ツアー参加者全員の頭の中をイヤな予感がよぎったことでしょう。何故って?そりゃ、1986年に打ち上げ直後に爆発したスペースシャトルが「チャレンジャー号」だからですよ。うーん、脱出方法だけはちゃんと確保しないと、とか(苦笑)。

35名の参加者を乗せ、シティプラザ大阪を出発した「チャレンジャー号」は大阪城の周りを回りながら、大川に面する毛馬桜之宮公園へ。私が毎年、桜の花見に行くところです。その途中、大阪城が建物の間からチラチラと見えます。

「チラ見がいいんです」

とは、バスガイドさんの弁。何度か大阪城をチラ見していたら、そのうち

「次はサービスです」

とのこと。ふーん、まぁ何回もチラ見たからなぁと思っていたら、その場所にはガソリンスタンドがあり、「サービス」という看板の向こうに大阪城がっ!ちょっとヤラレタ感が漂い、車内でもウケていました。

さて、毛馬桜之宮公園に到着した「チャレンジャー号」は、その一角から大川へざぶん!

 

約30分ほどのクルーズを行います。

 

再度陸に戻り、そこで小休止。皆して運転手さん達を取り巻いて質問攻めにします。

「エンジンは水上、陸上で共用なのか?」

「船体はどのようになっているのか?水上ではタイヤは云々・・・」

などなど。写真を撮る場所ももう普通の観光客と明らかに違います。やたらめったら車体構造を撮りまくりです。

 

まぁ、私もあんまり他人のことは言えないわけですけどね。スクリューとか撮ってるし、運転席も何枚も撮ったし。

 

再び走り出し、15時過ぎには「大阪市立科学館」へ。

 

ここで、閉館までの間は自由行動となります。メインは閉館後ですから。何人かはプラネタリウムを見に行きます。その他のメンバーは展示場をふらつき、1階の古い工業製品を展示しているコーナーで

「きっとみんな、ここに来ると『これ持ってる』とか『なつかしー』とか言って、動かなくなるんでしょうねぇ」

と何人かで喋っていました。すみません、私も動かなかった一人です(苦笑)。

 

閉館後は再度プラネタリウムドームに移動し、バーチャリウムIIのデモ映像などを見たあと、「かぐやの打ち上げ動画」を笹本祐一氏の解説と共に見ます。その後、氏が田代試験場で撮影してきたH2B用のLE-7Aを2機束ねた燃焼実験動画の上映、そしてこのあとに続く堀晃氏による梅田地下街の話などがありました。

 

そして「堀晃と行く『梅田地下オデッセイ』」。私を含めた数人は不参加でしたが(私は仕事をしていた)、ほとんどの人が参加。最後にお待ちかねの懇親会へとなだれ込みました。

 

いやいや、楽しい一日でしたが、翌日に控えたシノプシスと簡易シナリオのアップは出来るのか?そしてメールマガジンは無事に出せるのか?などなどの不安も同居した状態で翌日、第1日目へと続くのでした。

辞書を作ろう

1.はじめに
 この分科会は、いつも「百科事典を送る」とか「セサミストリートを送る」などでお茶を濁し、「これで相手と意思疎通が出来るようになりました」と言って いた意思疎通や翻訳関係が、そんなに簡単ではないのではないか?というところが出発点となった分科会である。従って、辞書のあるべき姿を追求するべく開催 されることになった(と理解している)。
以下に議論の流れを見ていこうと思う。

2.人類の言語学は役に立つのか?
 まず最初に議論となったのは「人間の言語を扱う言語学は役に立つのか?」である。
当然、相手との意志の疎通を考えるわけだから「翻訳」という二文字が頭の中にあったのは否めない。ところが、これは中間言語方式だのトランスファー方式だ のという方法論を調べておいたものの、お互いの交流が相当進んでいないと役に立たない。むしろプレコンタクトが終わり、交流が軌道に乗ってからの話になる のではないか、相手とまず交渉するに当たっては、そんなに豊富な語彙を得ることは出来ないだろうと思われ、あえなく頓挫した。
続いて出てきたのは文化人類学で行われる「基本的な共通語彙を収集する」というものだが、これも習慣や文化が違うといったレベルではなく、そもそも惑星 環境や体の構造が違う者同士では、地球上で規定されている「共通語彙」というものは何の役にも立たない事が明らかになった。つまり今現在地球上で行われて いる言語学の大系は、コンタクトを行う上ではほとんど役に立たない、ということがいきなり判明し、分科会はいきなり持ってきていた資料が役に立たない、と いう結論に達した。ここまでは10分程度。

3.プレコンタクト用辞書の構築(数学・物理学編)
 そこで切り口を変え、いつも苦労しているプレコンタクト段階で「相手に自分の意志を伝えるのに必要な概念」を抽出し、「それらを伝える手段」を考えるという内容にシフトした。
まず最初に伝えたい概念と伝えるのに使えるモノとを整理した。まずは伝わりそうなモノを以下にまとめる。

・名詞(モノとして示すことが出来る物)?
・数学
・物理量
・幾何
・肯定否定(好き嫌い)

ただし上記のものも、名詞はわかるかも知れないが、それがどれほどの役に立つのかはわからないという話になった。
「そうか、相手の惑星にはこんなものがあるのか」
程度にしか役に立たないからだ。

さて、続いて伝えたい概念を抽出するために、CJ4の時の地球人側メッセージを基に相手に伝えたい例文を考えた。なるべく簡単な物で、かつCJ4の時 に、何が何でもアヒストに伝えたかった文言をいくつか挙げてもらった。これは地球人側、アヒスト側の両方の切実だったメッセージを選んだつもりである。

1)木星軌道より内側には来ないで!(地球人側)
2)地球へ行っても良い?(アヒスト側)
3)あなたの星で一緒に住みたい(アヒスト側)

1)には位置、領域の概念、移動の概念(時間や因果関係)、否定の概念に意図(希望)、そして主客の概念が含まれていることがわかる。2)も同様に位置、 領域の概念、移動の概念(時間や因果関係)、疑問と意図、そして主客がある。3)もほぼ同様だ。つまりまとめてみると以下のようになる。

①位置・領域
②移動の概念 → 時間(因果関係)
③否定 → 答えを求めている場合あり(5W1H)
④意図(希望)
⑤主客

以上5つの概念を伝え、お互いに共通に使用することが出来れば、プレコンタクト段階での意思疎通はかなり楽になるはず、という話になったわけだ。
①、②は物理や数学の範囲で何とか片づくんじゃないか、という話でほぼ片づいた。③はただ単に肯定否定だけであれば数学の範囲だが、結局5W1Hをある 程度使えるようにする必要があるのでは?ということになった。疑問文が使えるのとそうでないのとでは、会話における幅が違ってくるからだ。とは言え、基本 的には数学・物理を中心とした方法論で何とか片が付きそうな感じである。
⑤はそれこそ自分の姿と相手の姿を使用すれば伝わりそうなものである。

4.プレコンタクト用辞書の構築(快・不快編)
 ということで、問題は④である。特に「希望する」という内容をどう伝えるのか?が争点になった。これはなかなか難しいが、方法としては「快・不快」を伝えることが出来れば良いのではないか、という意見が出た。
例えば例文の1)だと
「木星の公転軌道よりも恒星に近い領域にあなた(がた)が入ってくるのは、我々にとって不快である」
と要素に分解して記述できる。これならば「来て欲しくない」という意図が伝わるのではないか?と考えたわけである。
この調子で行くと例文の2)は
「我々が地球に行くと、あなた方は不快? YES or NO」
3)は
「我々が地球にいるのは、我々にとって快である」
などになる。

上記のように切り分ければ、①~⑤を伝える手段さえ確保し、記号による体系化を行うことによって、お互いが相手の意図を理解出来る程度まではなるのではないかと考えられるわけだ。
ちなみにちょっと話はそれるが、一つの言葉には一つだけの意味・概念のみを持たせる必要がある。これはAC1でも議論になったとおりで、一つの言葉・単語 に複数の意味を持たせるのは、人間はそのような使い方をしていてもシチュエーションによって意味を取り分けるが、異星人相手には不可能だからだ。

さて本論に戻るが、となると、あとは「快・不快」をどのようにして伝えるのか、というところに問題が集中した。これは単純に「YES・NO」ではないた め、切り分ける必要がある。また数学的手法を用いる事は出来そうにない。そこで鳥が縄張りを主張するために高い声で啼いたり、何度も短い音を発して警告し たりするという手法はどうかという提案がなされたりした。しかしこれもどういう受け取り方をされるのかがわからないため、もう少し生命にとって基本的な要 素で行う必要があるだろうということになり、以下のようなものが提案された。

・エネルギーがない、子孫が残せない、住めない環境などは「嫌」「不快」
・エネルギーがある、子孫が残せる、住める環境などは「好」「快」
・また環境の変化は「不快」など
・これらを大量に送ることにより、「好・快」「嫌・不快」の別を伝える

数を多く送るのは、相手の推理力・洞察力、要するに推論する力に期待するためである。つまり文明を築くぐらいなら、こういった能力を持ち合わせているだ ろう、ということである。ただし、「事例から一般性を見いだすような知性は一般的なのか?」という意見もあった。もしこういった能力を持たない、いわば職 人集団のような文明の場合はいくら送っても無駄かも知れないではないか、ということなのだが、それはそれで「わかった、皆まで言うな!」と理解してくれる かも知れない、という話にはなった。

5.その他
 その他議論の出たところをまとめてみると「肯定否定」の話のところで
「真偽と肯定否定は同一ではないのでは?」
という意見が出た。つまり「YES・NO」と「TRUE・FALSE」は別の概念だから、切り分ける必要があるのでは?ということだ。数学では「YES・ NO」が送れるのではなく、あくまでも数式として送ることが出来る概念は「TRUE・FALSE」であるため、その辺の詳細な詰めが今後必要になると考え られる。

また「文の構造をツリー化する」とか「文の数を絞る」なども意見として出ていた。いずれにせよ、こういったものは数学的・物理的な概念にせよ、先ほどの 「快・不快」の様な概念にせよ、何らかの通信フォーマットを構築したならば、あとはその共通基盤を使って例文をがんがん送るしかない、という流れで分科会 は終了した。

最後に参加者から出た感想を一つ。
「コンタクトって恋愛ドラマみたいなもんだな。『行ってもいい?』『来ちゃダメ!』『あなたと一緒になりたいの』ってね。」
なんともはや・・・。

10光年先を見るために

1.はじめに
 この分科会の目的は、いつも「まぁこれくらいなら見えるんじゃないの?」と適当に流してきた観測をより厳密に、「どれくらいのスペックの機器があればど のくらいまで観測が可能なのか?」を検証することである。そのため、典型的なコンタクトの例として10光年先の様々なものがどれくらい見えるのかを設定し た。これより遠いところもこれを基準にすれば、原理的にどれくらい観測可能かは計算が可能となる。
分科会は以下のように、まず課題を設定し、それを波長ごとに分類し、ほぼ同じ機材を使用できるものにグループ分けして検討を行っていくという方式を取った。ここではグループを「可視光線・赤外線」「電波」「X線・γ線」にの3グループに分類した。

2.課題設定
 まず最初に課題設定を行った。以下に出てきた観測したい項目を波長ごとに分けて列挙する。

1)惑星の有無は確認できるか?
2)大気や水の有無は確認できるか?
3)地球型惑星の表面の様子はわかるか?
4)建造物など都市の様子などを確認できるか?
5)異星人の顔は確認できるか?

6)電波放送は受信できるか?
7)核実験は検出できるか?
8)宇宙船の核パルスは検出できるか?

1)~5)は明らかに可視光線または赤外線領域の話だ。6)は電波の話だし、7)、8)はX線・γ線である。では3~5章にかけて、実際に考察を行っていく。

3.可視光線・赤外線
 まず基本として、1)の「惑星を見るためには」を考える。大きさは地球程度だと考えると、大体1万km程度のもの、ということになる。詳しい計算は7章 の「補足」に譲るとして、結果としては1光年先だと見かけの大きさは0.2ミリ秒角(mas:mili arc second)ということになる。つまり10光年先だと0.02mas。計算を簡単にするために0.01masとしよう。
今、すばる望遠鏡(口径8m、簡単のために10mとする)の分解能が10mas程度の分解能であり、分解能は単純に口径に反比例するので、3桁分解能を上 げるには3桁口径を大きくすれば良い。となると10km。ただしこれだと惑星が点として写るだけなので、せめてWindowsデスクトップ程度に写るよう な解像度(XGAくらい)が欲しいとなると、さらに3桁上げて1万km。地球サイズの鏡があれば何とか。ちょうど10kmの大きさの物が点として写る程度 だ。
しかしこれだけのサイズの物を向けたい方向に動かすのはかなり難しい。そこで干渉計を考えることにする。光・赤外干渉計だ。これならば惑星の光を捉えることが出来る口径の望遠鏡を必要なだけ離してやればOKだ。
ではどれくらいの口径が必要かというと、1光年先から地球を見ると、その明るさは1mJy。10光年先だと明るさは100分の1で0.01mJy。すばる望遠鏡ならば十分捉えることが可能だ(図1)。
これで惑星の写真を撮影するための大体のスペックが決まった。口径10mの望遠鏡を複数台、地球と静止衛星軌道あたりに置く。もしくはもうちょっと小さな惑星でも検出・観測できるように、地球-月系の干渉計を構築すればよい。
観測手順としては、まず相手恒星系の恒星が邪魔になるので、コロナグラフという特殊な加工を施した望遠鏡でもって、少し倍率を落として、惑星の位置を検出する。その後、干渉計でイメージを作るのだ。

ではこれを基本として2章で列挙した2)~5)を検討してみよう。
2)はスペクトルの話なのでここでは一旦置いておく。すると検討にのぼるのは3)~5)だが、スケールとしては以下の様になる。
3)サイズ1~10km程度 → 分解能10μas~1μas
4)サイズ10~100m程度 → 分解能0.1μas~0.01μas(100nas~10nas)
5)サイズ1~10cm程度 → 分解能0.1nas~0.01nas

上記のスケールを点ではなく、撮影できる程度の分解能で達成するには、3)は1)よりも3~4桁干渉計の基線長を長く取る必要があるので、1千万~1億 km離した干渉計が必要となる。まぁ、1AUも離せば良いのだから、地球近傍と太陽-地球系のラグランジュ点(三角形解)あたりに設置すればOKである。
4)はさらにそれよりも2~3桁上なので、100億~1千億km。AUで言うと約60~600AU。すでに現実的な数字では無くなってきた。冥王星軌道の両端に望遠鏡を設置して干渉計にする必要があるが、これは同期を取ることが出来ないのでは?
5)はさらに2~3桁上がるので6万~60万AU。光年で言うと1~10光年。相手の星系まで探査機を飛ばした方が手っ取り早い。

というわけで、現実的には10光年先の「惑星表面の都市の様子が観測できる」くらいまでが現実的な値と言えよう。

ではスペクトル観測をする必要のある2)であるが、これは惑星が十分な明るさで観測できれば問題ないので、1)を満たすことが出来ればほぼ大丈夫という 判断をしてよい。ただしぎりぎり写るという程度では分光できないので、ある程度は余力を持たせる必要がある。明るさは口径だけに拠るので、10m程度の口 径があればぎりぎり。余力を持たせるためには数等級暗いところまで検出できる必要があるとすると3倍程度、つまり30m程度の口径があれば十分であろう。

4.電波
 例えば10光年先から現在の地球から出て行く電波を捉えることが出来るかどうかを考える。そこでまずは現在の電波望遠鏡の感度を基にして、10光年先での放送される出力の下限値を算出した。
さて、現在の電波望遠鏡の感度は大体0.1mJy(ミリ・ジャンスキー)という値である(図1参照)。Jyという単位はあまりなじみのないものであると 思われるが、これはSI単位系では1E-26W/m^2/Hzとなる。従って0.1mJyは1E-30W/m^2/Hzとなる。
ここから放送出力を算出する。10光年という距離は約1E+17mだから、これを掛け合わせると最低限の放送出力は1E+4W/Hzとなる。周波数あた りの強度が10KWということだが、通常はもっと大きな出力で放送しているため、十分検出(視聴)可能だといえる。逆に言うとこれよりも出力の弱い、例え ばアマチュア無線や地域FMなどを受信するのは不可能と考えて良い。

また分科会内では議論がなかったが、分解能に関しては可視光線の1)と同等の分解能を現在のVLBIで達成していることから、地球型惑星の表面で強力な電波を発している箇所を特定できる程度の能力は十分あると考えられる。従って7)はクリア可能だろう。

5.X線・γ線
 これはかなり難しいのだが、2つの事柄に分けて考えよう。1つは分解能、そしてもう一つは感度である。
まず分解能だが、X線はともかく、現在のところγ線に分解能を求めるのはかなり難しい。というのも、現在のγ線観測は基本的に空気シャワー現象に伴う チェレンコフ光を観測している。そのためγ線のやって来た方向はそれなりの精度で特定できるが、ある程度以上の範囲まで絞ると、それ以上は誤差の範囲内に なってしまい、放射源の位置を特定するのは不可能と言って良い。実際、γ線バーストなどの観測も発生後すぐに光学望遠鏡がフォローアップ観測を行い、発生 源を特定している。
X線の方は数年前に国立天文台で開催された「大風呂敷研究会」で発表された物の中に1masの分解能を達成するという構想があることから、20年くらい のスパンで、このレベルが達成される可能性がある。つまり、現在のすばる望遠鏡クラスの分解能は達成されると考えて良い。ただし、干渉計に関しては同期を 取るのがほとんど絶望的なので、これ以上あげるのは無理かと考える。

続いて感度だが、あるエネルギー幅の中に入る光子の数が1秒、1平方cmあたり1E-5個くらいまでは誤差が少なく測ることが出来ると言って良いと思わ れる。もちろん観測時間(積分時間という)を延ばせば、もっと暗い天体でも写るのだが、誤差を考えるとあまりお奨めは出来ない(図2)。

さて、ではこのスペックで10光年先の何が見えるのかという話だ。つまり8)と9)を考えるわけだ。まずTNT換算で1メガトンクラスの核爆弾が発する エネルギー量は約1E+16ジュール。電子ボルトに換算するとざっと6E+34電子ボルト。これが全て1キロ電子ボルトのフォトンに変わったとすると、 6E+31個のフォトンに変わる。ちなみに1キロ電子ボルトという値を採用したのは、その辺のエネルギーレンジがもっとも感度よく検出できるからだ。とい うわけで、これが地球近傍にたどり着いたときにどの程度のフォトン数になるかというと、1平方cmあたり6E-6個。ぎりぎり見えそうな気もするが、これ では検出は無理である。誤差とかノイズに埋もれてしまっているために8)は完全に玉砕である。つまりその程度のものは見えないのだ。逆に見えるとすると、 上記の仮定の下でもTNT換算でせめて10~100メガトン。もちろんニュートリノに持って行かれる分や、その他の波長に食われる分を考えるとさらに 2~3桁くらい上でないと検出は出来ないことになる。そう言う意味では9)も不可能だろう。
すると、1メガトンクラスの核爆弾が1光年先で爆発しても、X線では見えない・・・可視光線でも・・・かもしれない。

6.最後に
 いろんな人から感想をいただいたが、「意外と見える」「意外と見えない」という意見が全てを物語っていると言える。これは参加した各人が「どの辺までは 見えるだろう」と漠然と抱いていたイメージにかなりのばらつきがあったことを物語っていると言える。ただ言えることは、どちらかというと「意外と見えな い」と思う人が多かったことだ。私自身も今回の分科会に先立ってかなり綿密に資料を集めた上、計算も行っていたが、思ったよりも見るのは大変そうだと思っ たのだ。
例えば可視光線・赤外線では、「そう苦労しなくても冥王星レベルは見えるだろう」とか「小惑星の大きいヤツは見えるだろう」と思っていたが、結構技術的 に高いものを求められると感じた。実はこの原稿を書いている最中に気がついたのだが、地球と土星の見かけの明るさがほぼ同じ、天王星、海王星あたりはすば る望遠鏡では検出不可能だということがわかった。何と恒星から離れすぎた惑星は、例えそれが巨大惑星であっても内惑星よりも暗くなってしまうのだ。そうい う意味では望遠鏡は大きいに越したことはないのだろう。

7.補足資料
 以下に、計算を簡単にするための、いくつかの数値を挙げておく。

1)大きさ&角度
・ラジアンから秒角への変換 ×2.0E+5
・1光年=約1.0E+13km=1.0E+16m=1.0E+18cm
・地球型惑星の直径=約1.0E+4km=1.0E+9cm
・地球型惑星の見かけの大きさ(1光年先)=1.0E-9ラジアン=2.0E-4as=0.2mas
・上記をXGAで見たければ・・・
10m鏡で10mas程度の分解能なのだから、1.0E+3倍
1000*1000Pixcelくらいで見たければ、1.0E+3倍
6桁上げればよい ・・・ 1万km

2)明るさ
・地球型惑星の明るさ = 1.0E-8erg/cm^2/s/sr/Hz
・地球を1光年先から観測すると
単位面積あたりの明るさ×面積/距離の2乗なので
(1.0E-8)×1.0E+18/1.0E+36 = 1.0E-26 = 1mJy
・上記を可視光線での等級で言うと約28等

3)その他
波長換算表
1eV =1.2398E-6m =2.4180E+14Hz
輻射強度
1eV = 1.6022E-12erg
1Crab = 2E-8erg/s/cm^2(かに星雲の明るさ)
1eV/s/cm^2/eV = 0.6626E-26erg/s/cm^2/Hz
Jy = 1.0000E-23erg/s/cm^2/Hz

アベノ橋魔法☆商店街のモデルとなった地域取材記

1.はじめに
 「アベノ橋魔法☆商店街」というガイナックス製 アニメの舞台となった天王寺・阿倍野界隈を久しぶりにフラフラすることにした。DVDを買ってしまった上、大学・大学院時代にはJRで一駅隣の寺田町が最 寄りの大阪教育大学天王寺学舎に通っていたため、この辺はよく買い物をしたり晩ご飯を食べに来たりした場所である。アニメでも語られている通り、再開発も かなり進みつつあることであるし、折角だから安倍晴明神社の取材も兼ねて、アニメに出てきた風景を撮影して回ろうと思いついた。

2.天王寺~東天下茶屋
8月17日 晴れ

 久しぶりにやって来た天王寺。家から地下鉄を乗り継ぎ天王寺までやって来た。今日の取材予定はまず安倍清明神社を回って、その後阿倍野・阿倍野筋商店街、そして「あべの銀座」へ。
「いやぁ、あっついなぁ大阪は」という鶴田謙二版のあるみちゃんがつぶやいていた様な日でありましたが、まずは阪堺電車で安倍清明神社の最寄り駅である 東天下茶屋へ。駅を降りて「この辺やったかなぁ」などと思いながら歩いていると、まず見つかったのが「阿倍王子神社」。ここの飛び地みたいな感じで「安倍 清明神社」はあるらしいので、まずはこの阿倍王子神社で参拝をした後に、目的の安倍清明神社へ。ちなみにこの阿倍王子神社にはとっても大きいクスノキがあ り、これがあのクスノキになったのでしょうか。

  そしていざ、安倍晴明神社。おお!これが、かの物語の舞台になった神社か・・・って小さいなぁ・・・とてもラジオ体操が出来るような広さはない。どちらか というと阿倍王子神社の方がそれらしい感じだったので、きっとその辺を混ぜて作品にしたのでしょう。でもさすがにお稲荷さんもありましたし、やはりここで も「ご縁がありますように」とお祈りしてきました。

3.阿倍野~再開発地域
  再び阪堺電車に乗って、今度は天王寺までは行かず、その一つ手前の阿倍野駅で降りる。ちょうど阿倍野ベルタの正面にあるんですよ、この駅。しかも!1話で 雅ジイが入院した後に出てくるシーンの元ネタ場所がありました。そう、この「サンタの作りたて工房」は、ちんちん電車が通り過ぎたときに見える「マンタの 作りたて工房」と全く同じシーンではありませんか!「そうかぁ、ここが元になっているのか」と、妙にマニアックな感心をしておりました。ちなみに、このあ と「折角だから」と阿倍野ベルタにあるはずのアニメイトに寄ろうとしましたが、場所がわからず断念。リベンジしに行かなくては・・・。

  そしていざ、「あべの銀座」から再開発地域へ。大和銀行の手前にあるのが「あべの銀座」の入り口なんですよ。いやぁ、久しぶりに行きましたが、だんだんお 店の数が減ってきているような・・・いや、もともとお店の数自体もそんなに多くない商店街なのですが、昔からあったアポロの横にもルシアスとかいう新し い、少なくとも学生時代を思い出したときには記憶にない建物も出来ていて、ずいぶんと変わってきている様子。「う~ん、再開発もここまで・・・」と思った 一幕でありました。

  そしてさらに裏の方にまわると、ありましたよ。「大阪市管理地」の看板。あの「亀の湯」の跡地に張られたフェンスにも張ってありましたよね。あの看板です よ。残念ながら「亀の湯」の元になったであろう銭湯は今回発見できませんでしたが、本当にあるんだなぁ、あの看板。しかもクレーンが持ち込まれている一角 もあり、「本当に再開発をやっているんだなぁ」と実感させられるところもありました。もう一回あの辺を回って、レポートしてみたいものです。


4.グリル・ペリカン?!

  その後、見つけてしまいました!そう、あるみちゃんの家「フランス一品料理グリル・ペリカン」の元になった場所!その名も「フランス一品料理グリル・マル ヨシ」!「『フランス一品料理』って、そんな店あるんかいな」って思っていましたが、本当にあるんですねぇ。しかも!この路地の形は、あるみちゃんとサッ シが走っていた、そして雅ジイが落下してきたあの形にそっくり!看板もペリカンの看板そっくり。しかもしかも、この「マルヨシ」の入り口は「ペリカン」と 同じような扉で、カーテンも同じ。ついでに言うと、「エスカルゴが3個で900円」というところまで一緒!

  うぉぉぉぉ!間違いなくここがモデルだ!しかもショックなことに、この奥には大衆中華料理チェーン店である「眠眠」があり、私は大学・大学院時代にこの道 を通って晩ご飯を食べに行っていたのである。しかも一回や二回ではない。なんで番組を見たときに思い出さなかったんだろう・・・?不思議である。シェフの おっちゃんに訊いたら昭和21年からやっているそうな。
ちなみに今日のお昼ご飯は当然「マルヨシ」でとった。ランチメニューがあり、1200円で食べることが出来る。内容はメニューに「洋風料理」と書かれて おり、「フランス料理」というよりは洋食屋さんメニューであったが。よし、次はあのメニューに書いてあったフランス料理を食べに行くぞ!というわけで、ツ アー参加者募集中!

2020/07/11追記

 

 

リクエストを受けまして、追記します。「グリル・マルヨシ」の場所ですが、すでに再開発により失われております。現在はあべのキューズタウンが建っています。赤い★マークを付けたあたりにありました。

5.次回に続く
 というわけで、「アベノ橋魔法☆商店街」の舞台となった地域を歩いて回った訳だが、まだまだ未発見のものがあると思われる。そこで、本来なら今日一日で終 わらせるつもりであったこのツアーをもう一回、今度は「あべの銀座」から新今宮駅の方まで拡張して行おうと思う。当然、あの「グリル・マルヨシ」でご飯 を、しかも今度はフランス料理を食べるのも目的としてだ。一人で行っても面白くないので、出来れば参加者募集!あ、ちなみに一人で行ってみたい人のために 「グリル・マルヨシ」の場所を示しておく。この大和銀行裏に小さな路地があり、そこを入ったところなので、もし行ってみたい人は是非どうぞ。ついでにここ に紹介しなかった写真を下の「写真集」をクリックすれば見ることが出来ますので、よろしければそちらもどうぞ。
では、第二回に乞うご期待!

北野異人館取材記

1.はじめに
 神戸の北野異人館である。大阪に住んでいるのだから神戸の異人館などいつでも行けるし、レポートを書くほどでもなかろう、と思われるだろうが、書いてしまったのだから仕方がない。しばらくおつきあいを願いたい。

2.出撃
8月4日 晴れ

神戸・三宮方面に取材に出かける。昨日急に思い立ったものだが、別に思い立ったから行くのではなく、プラネタリウムのシナリオを書いていたときに、異人 館の雰囲気がどうしても思い出せなくて困ったから、もう一度確認するのと同時に写真を撮影しておこうと思ったからである。
また以前からテレビで見て気になっていた、異人館通りあたりにある中華のお店に行ってみたいという希望もあったのは言うまでもない。しかし一人で異人館かよ・・・。さみしいものがあるな。
家を出たのはすでに11時半。もっと早く外出するつもりだったのだが、ついホームページの更新をしていて遅くなってしまった。まぁ、気になるところを次 々と見つけてしまったのだから仕方がない。それにしてもこのレポートがあがると、ますます「SF」からは遠ざかるなぁ・・・何か「SF」っぽくするコンテ ンツを開発せねば。
ついつい愚痴モードに入ってしまうが、折角晴れているし、それほど湿度も高くないので過ごしやすい日だし、たまにしか出かけないわけだから、楽しくやろう。

で、家の近所にある阪神電車野田駅から西宮行き急行に乗る。三宮まで直通では行けないらしい。まぁ、急ぎでもないし、のんびりと行けばよいだろう、と思 い途中で乗り換えることにする。海方向を見て、つまり陽が当たらないように北側の座席に座っているのだが、目の前に阪神高速の高架が見える。あ、そろそろ 甲子園か。道理で。そういや甲子園パークも閉園したんだっけ?すでに「住宅展示場」の看板が見える。さみしいものだ。
などと書いているうちに西宮到着。ここでいったん電車を降り、須磨浦公園行きの特急に乗り換える。現在12時5分。この調子で行けば12時20分頃には 三宮に到着できるかな?するとまず中華屋さんを捜していきなりお昼ご飯コースか。まぁそんなもんだろう。取材は13時頃からスタートすれば、18時までは 5時間も使える。いや、実際にはそんなに足がもたないだろうから、16時くらいには切り上げるとは思うが。すると図書館に本を借りに行くことが出来るか も。おお、なんて取材活動な一日だろうか。ライターの鏡ですな。プロじゃないけど。いや、お金もらってるからプロか。

車内の様子も、昔を思い出してみるとずいぶんと変わったものだと思う。新聞を読む人は当然いた。音楽を聴きながら本を読む人も、私が作品を書き始めた頃 にはいたが、ずっと携帯電話でメールを書いている女性とか、ましてや私のように小型端末で文章を書いている人などは考えられなかった。当時のワープロは ラップトップになった頃だったしね。あれから考えると15年。本当に世の中変わったものだと思う。15年でこの有様なのだから、100年後の未来を予想し ようなんて、鬼が笑うどころか滑稽でしかないのかもしれない。でもSF作家はいろいろと未来を考えるし、将来を予想したがるものだ。ジュブナイルやライト ノベル系は別として。そうだそうだ、折角だから、うちのホームページには「こんなのは開発できないだろう!」と大見得を切って言える変なものを準備しよ う。あの「重力ソフトレンズ」みたいに。あれなんかはっきり言って、私が考えた中で無用の長物第1号になるものだろうなぁ、という変な自信を持っている ぞ。

と、三宮到着。時刻は予想通り12時20分ちょっと前。さぁ、いざ北野異人館方面へ。まずは昼飯だ!

3.異人館めぐり
 などと書いていたにもかかわらず、北野坂への入り口のところで1300円の「パスポート」なるものを購入してしまい、しかも中華屋さんが見つからなかっ たため、そのまま先に取材をすることに。まず目指したのは「香りのオランダ館」「デンマーク館」「オーストリアの家」。「香りのオランダ館」は旧オランダ 総領事邸らしい。ライプライターだのオルゴールだののアイテムの写真を撮る。中は香水の香りで良い感じなのだが、何しろ目的が目的なので香りなんぞそっち のけで、ひたすら雰囲気がわかる写真と珍しいアイテムを撮影することしかしない。楽しみ方としてはちょっと違う気もするが、まぁ取材なのでよいだろう。
続いての2館はテーマ館。まぁ、半分はどうでもいい感じだった。一応デンマーク館の方で、昔の傘やステッキ、ヴァイキング時代の男性・女性の衣装を撮影できたので良しとしよう。オーストリアの家でも貴族の衣装を撮影できたので、これもそれで良しとする。

これだとあんまり目的を達したような気がしない。そこでさらに回ることに。続いて行ったのは旧中国領事館。いや、「うろこの家」に行くつもりが通り過ぎ てしまい、そこまで行ってしまったんだけど。ここで3500円払って「うろこの家グループ9館」を回ることの出来るチケットを購入。すでに昼ご飯のことな どどこへやら。ここから怒濤の異人館めぐりが始まったのだ。
旧中国領事館はやっぱり中国の家具が多い。こちらの欲しいイメージとはちょっと違うので、とりあえず撮影はするがパス。続いて北野外国人倶楽部(旧フ リューガ邸)。ここは結構ものの揃ったキッチンがあったり、その上にメイドさんの部屋があったりで結構面白い。外では特選入館券を買った女性がドレスを着 させてもらったりしている。結構良い感じだ。そして山手八番館(旧サンセン邸)。やたらと仏像や前衛彫刻なんかがあったりして、仏教美術展を見ているよう だ。しかも何故だか1階にも2階にもドン・キホーテとサンチョの像がある。何なんだろう、これは?
さらに「うろこの家(旧ハリヤー邸)」。ここは良いぞ!タイプライターにカメラと三脚。それにあれはテニスラケットか?うむ、良いものを見せてもらった。ついでに言うと隣の「うろこ美術館」も良い感じだった。今度はあの2館だけを回るのも良いかも。

さぁ、中盤も終わり終盤戦開始。まずは市営の「ラインの館」へ。残念ながら調度品はほとんどなし。期待はずれであった。さらに旧パナマ領事館。船の模型 がたくさんあるところはさすがに海運国パナマの領事館である。しかも入り口にあるのはシーホース像ときたもんだ。ちゃんと頭をなでてきましたよ。
残るは3館。まずは英国館(旧フセデック邸)。1階にも2階にもバーがあり、カウンターがある。良いのは裏に井戸があったりしたところか。続いて洋館長 屋(旧ボシー邸)。ここにはいろんな調度品があって、非常によい。いろいろ撮影したが、ちょっとピンボケ気味だったのは、逆光になるポジションのものが多 かったからか。しかも自分で光を放っている調度品もあるし。最後はベンの家(旧アリソン邸)。家中剥製だらけ。ホッキョクグマもいたが、あれで2.5m か・・・すごく威圧感がある。やはり身長差があると威圧感はそれだけ出てくるものだなぁ。勉強になる。
これで全て回った。途中結婚式を行っているカップルがいたりして、良い感じの一日だった。

4.その後
 その後、中華料理屋を捜してハンター通りへ。ようやく見つけるも15時まで?時計を見てみると・・・あ、回ってら。うーん、残念。今度にするか。
やむを得ずそのままうろうろし、結局のところ駅前の地下飲食街で昼食。3時間に渡って歩き続けたものだから、足が棒のようだった。
昼食後はとっとと家に戻ってしまった。まぁ、こんなもんだろう、今日のところは。
次回は「風見鶏の館」とか、西の方を回ろう。いや、もう別に資料は揃ったから行かなくても良いという噂もあるのだが。

CJ Extra for NHK After Report ~アヒスト再び~

発端
 2/10。昨日のAC1に引き続いて、NHKの取材のためにFCSをやるというので、やって来たのがここ、新大阪コロナホテル。今日のは簡易版なので、 最初から異星人設定も作られたものがあるようだ。9:00開始だと聞いていたので8:30過ぎにホテルに着くと、そこにいたのは林さんと大井さんだけ。あ れ?他の人はまだ?
とりあえず3人で机を並べているうちにNHKスタッフが到着。1部屋しか借りていなかったCJ側に対し、
「FCSやるのなら2部屋あった方がいいですよね。もう一部屋借りましょう」
と借りてくれる。さすがはNHKだ。
で、人もだんだん集まって来たので、チーム分けをする。あ、私は今回異星人側か。では地球人のみなさん、さようなら。と地球人が全員出ていったところ で、異星人なんだけど・・・あの~、これってCJ4のアヒスト・・・あの時、私は地球人側で痛い目に遭わされたんですけど・・・。まぁ、いいか。「これも 経験だ」と割り切り、アヒストの設定を思い出す。
「確か無顎類から進化して、性は2つ。卵生でバカみたいに人口が増える。産児制限とか血縁重視はタブー」だったよね。これがどれだけ役に立つのかわからないけど。
9:30。FCSが始まる。生物設定はアヒストだけど、それ以外の設定が明かされる。まず、居住しているのはくじら座タウ星。タウ・セチとしてSETI では有名な恒星である。この星は地球人にとっても探査対象になっているので、すでに電波文明は脱していて、ここ100年くらいは電波発信を一切行っていな いことにする。
また惑星の数は7つ。そしてその第2惑星に我々は住んでいる。

プレ・コンタクト
 これよりアヒスト・モードに入る。但し年は地球の西暦、単位系は地球の標準的な単位系である。

2040年、我々は滅亡の危機に瀕していた。医療技術の進歩により、もともと多産であった我々アヒストは、人口が爆発的に増え始めたのだ。計算すると単 純計算でも40年の一生の間に2人で始まった一族が1万人を越えるため、どこかに移住先を求めることになり、恒星間探査・移民船の開発に力を注いできた。 そしてようやく完成の目途が立ち、以前から調査を続けており、知的生命体が存在すると考えられる惑星系にメッセージを送ることとした。この惑星系は牛飼い 座のはずれ、冠座との境界方面に10光年ほど離れた場所にあり(この星座は便宜上そう書いているだけであり、実際にタウ・セチからは全く異なった配列にな るはずです)、ハビタブルゾーン内にある第3惑星からかなり強力な電波が発せられていることがわかっている。第4惑星もゾーン内にはあるが、電波強度自体 は大したことがないので、おそらく彼らは主に第3惑星に住んでいるのだろう。

我々はかの星系に対し友好と移住したい旨を伝えるメッセージを電波で発信するとともに、恒星間探査機の建造に着手した。メッセージには相手星系の惑星の軌道半径と赤道半径を示すグラフ、そして我々アヒストの挨拶のポーズ、さらには第3惑星と第4惑星の上に同じ絵を置き、
「この惑星にすんでいるのか?」
と問い合わせるつもりのメッセージを送信した。サイズは1023×1023ドットという、かなり大きなものである。

10年後、2050年。恒星間無人探査機が完成した我々は20年後に着くように、0.13G加速を行うよう設定して相手星系に向けて発射した。当然、探 査機を送ることは相手に知らせる。相手星系で停止する(正確には人工惑星となる)探査機は、親機が母艦機能を持ち、通信の中継などを行う。同時に詳細な観 測を第3及び第4惑星に対して行うための子機2機、さらにバックアップ用に1機を積んでいる。
また同時に移民用コールドスリープ併用恒星間宇宙船の建造を開始した。これは探査機の設計をベースに大型化したものであり、20年後に完成の予定である。
この年、周期律表、我々の生体組成表、地質学的データ、大気組成・表面地質情報などの惑星環境データを送信した。相手がこれを解釈して、我々の母星に対する知識を得て、我々とよりよい関係を持ってくれることを望んでいるのだ。

2060年。そろそろ最初の返事が来る頃である。我々は次のメッセージを準備しつつも、彼らからの返信を待った。そして翌年、待ちに待った彼らからのメッセージが到着した。その内容は
1)第3惑星にのみ相手の姿らしきもの
2)我々の星系に我々の姿(第2、3惑星両方に)
これは第3惑星だけに居住しているという意味だろうか?それとも・・・少なくとも②は我々が恒星系の中のどちらかに住んでいるのだろうと考えていることを示している。すると、ただ単に向こうは第3惑星にのみ居住しているとも受け取ることが出来る。

明けて2062年。我々は先年のメッセージに対する返答を送ることにした。それは下のようなものである。
1)我々の星系(第2惑星にのみ我々の姿)
2)相手の星系(第3に相手、第4に我々の姿。上に)
これで我々は恒星系の第2惑星に居住していることを示し、相手側の恒星系の第4惑星に住みたい、若しくは行きたい旨を示した。
また同時に共通のコミュニケーション基盤を構築するために、文字、数字、演算記号、論理記号、単位系を送信する。これを2070年まで送信することとした。

2065年。2060年から逆噴射を始めた探査機を相手が観測可能になる。これで我々が向こうに対して探査機を送っていたことが我々の通信以外にもはっきりとわかるはずだ。

2070年。遂に待望の移民船が完成した。ちょうど探査機も先方に到着した頃である。我々は探査機からの結果が帰ってくる10年後に出発することを決 め、もう一隻の宇宙船を建造することにした。2隻体勢であれば、万が一どちらかがトラブルを起こしても、相手の恒星系にたどり着ける可能性が高まるから だ。また、あらかじめ出発前に予告を送ることにした。それは「第4惑星まで行きます。そこで会いませんか?」という意味のメッセージである。

しかし、気になることもないではない。向こうからのアプローチがあんまりないのだ。こちらから送ったデータに反応し、返答が来るまで最低20年かかるの は理解できるが、それにしても情報の露出があんまりないような気がするのは気のせいか?とはいえ、我々には残り時間や選択肢が限られているのだから、これ はもう仕方がない。

2080年。2隻目の宇宙船が完成するのと同時に、ついに待っていた探査機からの結果が返ってきた。その結果、第4惑星は大気が薄く、居住には適さない ことがわかった。また都市らしきものはないが、小規模な文明活動が認められた。一方第3惑星の方は窒素と酸素からなる大気を持ち、都市と大規模な文明活動 が見られた。当然我々の生存にも適した環境だ。だが相手の母星でもあるため、ここに移住させてもらえるかは交渉次第となる。
一刻の猶予もない我々は、この探査結果を受け、早速宇宙船を発進させることにした。2隻の船の1隻目には人員500人と居留地建設用の資材を、そして2隻 目には人員ばかり1000人を搭乗させ、20年後の2100年に到着するスケジュールで送り出した。当然のことながら、向こうでの居留地建設には技術者が 欠かせないので、かなり比率が高くなっている。
同時に母星側からは相手側に対し2100年に到着予定であること、そして第4惑星で会いましょうと言うメッセージを送った。また、まだまだ移住先を模索するとともに、移民を継続しないといけないので、3隻目の建造を開始する。

2082年。新しいメッセージが到着した。しかもこれは探査機を経由してきたものらしい。どうやら彼らは探査機を有人であると勘違いしてしまったよう だ。内容はどうやら第4惑星で会いましょうとも受け取ることの出来るもの、そして第4惑星表面上の地図である。ちなみに地図だとわかったのは、先年に探査 機から送られてきていた地図と一致したからである。ここで会談を行うつもりだったのだろうか?少なくともコンタクトには積極的らしい。これならば、先に発 進した2隻も先方の恒星系で無事コンタクトが出来るに違いない。

と、ここで時間がやってきたので、今回はコンタクトなしとなった。

反省会
 さて、反省会である。まず、今回のコンタクト全体に言えることであるが、先日のAC1の結果が反映されていたのは言うまでもない。どんな際にも相手の不 信感を招かないために、アヒスト側は何かを送る際には必ず予告を出した。また、フライバイ型の探査機はほとんど役に立たないであろうと言う結論から、相手 星系で停止するタイプのものが採用された。
地球人側からは新しい提案があった。短い期間で質問をするのは難しい。そこでとりあえず「これが事実なんだろう?」と突きつけてみる。もし間違っていれ ば、訂正されて返ってくるだろうというものだった。全ての項目についてこれらが使用できるかは判断が難しいところだが、少なくともアヒスト側は訂正した情 報を送り返したのだから、地球人側の意図は成功したと言って良いだろう。

しかしそれ以外には結構厳しい意見も出た。まずアヒスト側の出した最初のメッセージだが、地球人が第3、4惑星に住んでいるという事実の確認と同時に、 我々がそこに移住したいという意図を伝えたつもりだったが、これが相手には伝わらなかった。複文にしてしまってはわかりにくいということだ。つまり、最初 のメッセージは
「挨拶」
「相手星系の姿を示すという事実」
「第2、第3に住んでいるのか、という質問」
「そちらに移住したい、という希望」
と最低でも4枚は必要だったということだ。これを1枚で済ませてしまったのは、確かにわかりにくいかもしれない。以降についても同様である。また途中から地球人側のレスポンスが落ちたのは、我々の探査機が有人だと勘違いし、
「どうせ来るのなら無理に通信なんかしなくても、相手が来てから会見して訊けばいいや」
と、待ちに入ってしまったためであった。そういう意味ではこちらの動きは性急にすぎたのかもしれないが、かなり逼迫した状況を設定されてしまったため、や むを得なかったと言うべきかもしれない。あんまり厳しい初期条件を与えると、コンタクトは可能かもしれないが、プレ・コンタクトがおろそかになる可能性を 指摘されたわけだ。

FCS at 西はりま天文台公園 After Report ~星とFCS~

発端
 「FSCをカリキュラムとして取り入れてみたい。そのために一度体験してみたいんですが。」
CJ4以降、あちこちで「FCSをカリキュラムとして教育現場で取り入れないか?」といろんな人に紹介してきたが、昨年10月に西はりま天文台公園の複数 の研究員から、そう依頼された。西はりま天文台公園というのは兵庫県立で、兵庫県佐用郡という岡山県との境に近いところに建つ口径60センチの望遠鏡を備 えた施設だ。
昨年11月末に西はりまの坂元研究員を交えてCJのスタッフと検討し、年明けに一度シミュレーションを行うことになっていた。

年が明けて2002年3月2日、土曜日。この日、泊まりがけで西はりま天文台公園にてFCSのデモを行った。CJ側でFCSの設定などは全て準備し、向 こうではプレゼンテーションとデモという方針である。FCSもDCの簡易版とし、あんまり深くつっこんだ設定などは避けることにした。
さて当初14時からかと思っていたが、実際は15時からスタートとなった。台長の黒田さんが15時にならないとやって来ないなどの理由もあったし、何より 準備していたパワーポイントの画面が大型ディスプレイに表示されなかったからである。どうやら先方が準備していたコンバーターが激しい機種異存を持ってい るようだ。今後は注意がいりますな。
15時になると早速始める。まず大迫さんがFCSの歴史と概要を紹介。続いて阪本さんがパワーポイントを使ってのプレゼンテーション。主にCJの活動と FCSの流れについての紹介である。事前打ち合わせからすると若干の時間のずれはあったが、質疑応答まで入れて16時には終了。その後、FCSに入ること になった。

CJ側のスタッフは事前に班分けをして・・・いたのかいなかったのか、とりあえずその場で何となく決めた。西はりま側もスタッフを適当に二分し、同席し ている「人と自然の博物館」スタッフも半分に別れてFCSを始めた。西はりまにはスタディルームという大きな部屋があり、ここはパーティションで二部屋に 分割できるので、こういうときには大変楽である。


簡易ワールド・ビルド

 私が入ったのは「異星人2」というチームで、これは「改造地球人」という設定である。そこでまず地球人と異なる肉体的特徴を何か一つ付加すると言うことで議論が進んだが、これは大いにもめることとなった。これには以下のような意見が出た。

赤外線が見える
赤外線しか見えない
電波が見える
超音波を出せる

指の数を変える
光合成が出来る

性が3つ
単性生殖と両生生殖

大きく分けると3つに分類できる。つまり認識系の変更、体そのものの特徴付加、生殖系の変更である。生殖系は今回は見送られ、また同時に体への特徴付加 も見送られた。認識系だけをいじることにし、最終的には赤外線も見える。ということにした。具体的には「青、緑、赤外」と、現在の赤を感じる部分が赤外線 へと置き換わる形である。
これによりどのように社会に変化が現れるかを考えた。結果、いろいろと面白い話が出てきたので、まとめてみよう。
まず大きいのは「街灯がなくなる」というものである。街灯は「治安維持のため」ということで設置されることが多いのだが、我々は赤外線を見ることが出来 るため、人間がそこにいるのかを見ることが出来る。またついさっきまでいたかどうかを残留熱から判断できる。つまり闇討ち文化というのが発生しない。また 会話をしていても相手の体温の変化で感情の変化を感じることが出来るので、それを積極的に活用する文化が生まれる。つまり体温変化を併用して会話をし、微 妙なニュアンスを伝える補助手段とするとか、会話をするのは顔色をうかがいながら行うのが当たり前であり、「顔色をうかがう」をいうのは「会話をする」と いうのと同義語である、など。
天文学分野でもかなりの変更が見られる。つまり実際に今見えている星空だけではなく、星形成領域と呼ばれる、原始星が誕生している現場を望遠鏡さえあれば生で見ることが出来る。

続いて技術レベルであるが、これは事前設定として、シミュレーション開始時の技術レベルを1990年頃の地球と同じとした。つまり自分たちの惑星から人工衛星程度はOK。ということである。
ちなみに名称は、熱を見ることが出来る、ということでネツメ人とした。安直な名前と言ってしまうとそうなんですけどね・・・

簡易プレ・コンタクト
 さて、我々は1990年(シミュレーション上はー10年:以下SMY-10)に10光年離れたとことにあるとある恒星系でブルーシフトする電磁波を確認 した。どうやら核融合時などに発生するものらしい。どうやって確認したのかは少し問題があったが、まぁ、人工的な何かが見えたのは事実だ。しかもその光は 非常に短期間だけ見え、すぐに見えなくなってしまった。そこで我々は知的生命の存在を確認するため、電波と赤外線を主体として通信を行うこととした。何か (誰か)がいるのであれば受信して返答をもらえることを期待した。さらに単純な素数だけを送り続けるのも芸がないということで、以下のような工夫をしてみ た。
1)1年目、電波で19までの素数
2)2年目、2つの周波数(電波と赤外線)で、倍の数の素数を送る
3)3年目、3つの周波数でさらに倍の素数を・・・
4)4年目はさらに・・・
というように、毎年送る素数の数と周波数とを倍々にしていったのだ。これを10年ほど繰り返した。

しかし相手の正体については議論が分かれた。そもそもブルーシフトというのは何かがこちらに近づいているということをあらわしているのか?いや、もし宇 宙船の発進の時に噴射された粒子の発光が見えてのだとすると、それは地球からは遠ざかることになるわけだから、レッドシフトするはずである。しかし今回の はブルーシフト。とすると反対側のどこかに向けて出発したか、どこかからやってきて10光年先の恒星系で停止したかだ。

そしてブルーシフト検出から10年(SMY0)。に我々は相手星系の詳細な情報を得るために、専用の天文衛星「ジュガク」シリーズを打ち上げ、さらに月 面に電波天文台「モリモト」を建設した。これにより地球と月の38万キロを基線とする超高分解能電波観測を可能とした。それにより相手の星系の情報はかな りわかってきたが、どうやら文明らしき痕跡は見あたらない。ということであった。ということは、そこにやってきたのか?

SMY11。先方からの返事が返ってきた。やはりそこには何かがいたのだ。送られてきた通信は電波と赤外線の2つのチャンネル。電波は9個の素数を、赤 外線は18個の素数をヘッダにしたもので、彼らのいる位置を基準として、我々の太陽の位置、彼らのいる恒星、そして彼らのいる場所から20光年、我々の太 陽からだと30光年離れた場所にある恒星、をそれぞれ示す3枚の画像だった。おそらく我々のことを知っていて、彼らのいる場所を示して、というところまで はわかったが、問題になったのは3枚目。
「これはここに行きます、なの?それともここからやって来ました、なの?」
結論のでないまま、しかしそこに知的生命体がいると言うことだけは確認できたので、我々は友好の挨拶として、我々の姿(男女と子ども)、周期律表、体の組成、数学、計算式、人間・惑星・恒星からの距離など、大きさにまつわる情報を送った。

翌SMY12、こちらからの返事を待つまでもなく、彼らから姿や周期律表、体の組成、水素の波長(21センチメートル)を基準とした体の大きさなどが送られてきた。見たところ「二本足で立つでっかいねずみ」みたいだ。
「考えることは向こうも同じか。」
ちょっとくやしくはあったが、もしかしたら延々と素数を流し続けた10年間は無駄だったのかな?などと考えながらも、次の手を考える。
我々としては、30光年先の恒星から来たのか、そこに向かおうとしているのかは問題ではない。そこへ行こうとしているのであれば、
「そっちよりこっちのほうが面白いぞ」
と主張し、そこへ来たのなら
「もうちょっと足を延ばしてみない?」
と無理矢理にでも誘致する作戦に出た。いや、ちょっと無謀だったかもしれないし、あとで実際に「しまった!」とみんなで頭を抱えたのだが・・・。そんなこ とは当然そのときにはわからないので、我々の太陽の上に、相手の姿と我々の姿とを書き、「来て欲しい」という意図を伝えようとした。また我々の音楽を送る ことにした。これは
「もっと慎重に」
という意見もあったのだが、西はりまの黒田台長が
「空気の振動というのは宇宙に普遍にある。従って感じて楽しくなる振動というのがあって、音楽というのは宇宙で共通だ!」
という主張を受け入れてみたものである。かなりチャレンジングなことだったことは確かだろう。ではどんな音楽を送るのかももめた。曰く、
「宇多田ヒカルの歌には成分として云々・・・・」
とか
「それなら美空ひばりの歌にも・・・」
などと言うことが半ば真面目に、半ば投げやりに議論され、結局はクラシックなどではなく美空ひばりの歌をサンプリングして相手に送ることにした(スーパーバイザー:苦力さん、ごめんなさい)。

SMY13。彼らからの通信は再び新たなメッセージになる。先年送られてきた星図。これの中で議論になっている30光年先の恒星について3枚の絵が送ら れてきた。1枚目はそれまでと同じだが、2枚目ではその星が大きくなり、3枚目では消えている。しかも通信にはトリチウムの半減期を使ってその図に描かれ た状態への遷移時間が表されており、3枚目になるのは6万年後のことらしい。
「6万年後には超新星爆発で星がなくなるのか?」
「いや、そんなんだったら20光年離れたくらいじゃだめ。」
「人口爆発するとか?」
「6万年後の対策を今から練ってるのか、こいつらは?」
議論は白熱し、結局のところは
「情報が少なすぎてよくわからんが、とにかく6万年後に困ったことが起こるらしい。」
ということだけがわかった。しかし6万年後のことってどうやったらわかるんだ?謎である。

SMY14。彼らからは一方的に通信が送られてくる。今回も星図で、30光年先の恒星から3方向に別れて矢印とおぼしき記号が伸びている。伸びた先から再び次のところへ・・・という図がさらに続く。
「これ、人口爆発だ。6万年で人口爆発して、母星に住めなくなるからあちこちに移住して回ってるんだ。」
「やっぱり外見通りのネズミ星人だ。」
「でも通告はしてくるから、礼儀は正しいんだなぁ。」
「焦っているがマナーは守るネズミなんだ。」
なんなんだ?この印象は。しかしまぁ、その場にいたほぼ全員が礼儀正しいけど焦っているネズミを頭に浮かべながら議論を続けたのは間違いないだろう。
「じゃあ、『来て』って通信はまずかったんじゃあ・・・。」
「まずいなぁ。じゃあ、来るなっていうか。」
「ただ『来るな』じゃまずいから、領土っていうか、境界線を決めちゃおう。ここからは俺たちのもんだって主張しないと。」
というわけで、我々の太陽とその周辺には我々の姿、彼らがいるあたりには彼らの姿を描き、棲み分け提案をしようとした。さらには来て欲しくないと言うメッセージを伝えるために不快に感じる音楽(というか不協和音)をつけて送った。
しかし実際には「俺たちのもの」と主張した恒星にまで到達できる能力はない。技術レベルの差は圧倒的であり、科学力の面では勝ち目がない。我々は有言実行 できるために科学力のアップを図りながら、もしばれた際にはあやまる、つまりヘコヘコする方法を考えながら過ごすこととなったのである。

反省会
 お互いに言いたいことはあったのだが、ネツメ人側は相手の話を聞いてちょっと驚いた。まず、宇宙船は彼らが建造したのではなく、機械は先行文明の残した ものがそこかしこに転がっており、それを組み合わせて造ったというのだ。つまりどうやったら動作するのかはわかっても、その原理はあんまり詳しく知らな かったらしい。
また彼らは基本的にはDC1のヒュンヒュンであり、森の中に小集団に別れて生活している。集団間は楽器を鳴らすことで意志疎通や情報伝達を行う。より離れ たところへの通信も間にいくつかの集団を介することで行い、一種のインターネット状態を形成しているらしい。各集団は自分の好きな仕事をしたりするコミュ ニティーを形成しているので、いわばホームページを持ったオタク集団と位置づけられる、と言う報告があった。

また、30光年先の恒星はやはり彼らの母星で、6万年後に恒星が大規模な変動をおこして母星に住めなくなりそうだというので、移住先を求めて出発したら しい。10光年先で我々が観測したブルーシフト・イベントは宇宙船が制止するときの噴射を見たわけであり、彼らは我々が通信を送るまではこちらに気がつい ていなかったらしい。
そこで調査・補給を行った後母星に帰るつもりだったが、我々からの通信を受信したことで方針を変更。こちらに来る予定で補給を行っているということであった。

その後は設定や通信文の是非についての議論があった。まず6万年後の危機などというのをどうやって検知したのか?不可能ではないか、設定の不備ではないかと言う意見が出た。
まぁ、それは設定だけの問題なので、あんまり気にしなくても良いのだが、問題になったのは「音楽」の妥当性である。これはAC2などで議論が出ると良いの だが、やはり音楽を宇宙普遍のものと考えるのは無理があるのではないかという意見が出た。さらに言うと、美空ひばりはダメだろう、などなど。まぁ、わかっ てはいたが、やはりダメだったか。

最後に
 その他運用上の問題点などが話し合われたが、基本的には西はりまスタッフも来ていた「人と自然の博物館」のスタッフもFCSの特徴に関しては理解してもらえたものと思う。実際に、その後の懇親会では
「こういうやり方もできそうだ」
と、小学生相手に出来そうな事例の案を彼らから受けることが出来た。また
「実践例が出来たら是非紹介を」
という提案にも快く受けていただけたようなので、今後西はりま、ひいては兵庫県を中心としてFCSを取り入れた教育カリキュラムというのが広がるかもしれ ない。そういう意味ではFCSの内容自体には問題が多かったのだが、デモという目的は十二分に果たしたのだろう。FCSを行う上での注意点や問題点が多く 出たほうが、今後運用を行う上で出てくるであろう問題点を事前に察知することが出来るだろうから。

そして夜が更け、観望会の時間には空を覆っていた雲もどこかへ退き、我々はスタッフの案内の下、60センチの望遠鏡を占有して星を見ることが出来た。西はりまスタッフのみなさん、ありがとうございました。この場をお借りして、お礼を申し上げたいと思います。

Day CONTACT3 in Nagoya After Report ~カーストミミズ VS キカイ人間~

旅立ち
 今日、10月13日は、「Day CONTACT3 in 名古屋」が催された。参加のため朝5時50分起床。眠い。しかし「たまにはいいだろう」ととち狂って朝7時難波発の近鉄特急「アーバンライナー」の予約を取ってしまったので仕方がない。
家を出たのが6時25分。残念ながらこの時間に野田阪神を出る電車があったのだが、行ってしまった。次は35分。まぁ、これでも間に合うからいいんだけど、発券でトラブったら終わりだな。
という不安を抱えつつ、いざ名古屋へ!ちなみにここまでのパートは地下鉄の中で書いてます。

と言ってたら切符を買ったらお金がなくなった。とても30代の財布とは思えん。取りあえずアーバンライナーはゆっくり寝て、名古屋に着いたらすぐにお金をおろして会場へ向かう。
会場最寄りの地下鉄の駅でCJ代表の大迫さんとばったり出会う。いろいろ話をしながら一緒に会場へ。すると見かけた顔がありますねぇ。うんうん、いつものメンバーだ。
「今回は議長」を覚悟して臨んだが、優先順位があって私の議長はなくなった。東京方面を優先する人事としたようだ。しかし油断は出来ないけど。

タイムテーブル
 さてちょっと話は戻るが、会場となった愛知県産業会館に集まったのは約30人。私にとってはもう4回目となるFCS(ファースト・コンタクト・シミュレーション)である。しかし今回は半分が新人らしい。

さてタイムテーブルであるが、これは以下のようであった。
10:30~ 設定作業
11:40~ 昼食
12:40~ 設定残り
15:30~ プレ・コンタクト
16:40~ コンタクト
17:20~ 発表
18:00  終了・解散
19:00~ 懇親会
というスケジュールで進行した。前回までと比べるとちょっと押し気味の設定であったことは否めない。まぁこっちもむこうも結構もめてなかなか決まらなかったからだけど。

ちなみに私はAチームで、議長は井手さん、苦力は野田令子さんが務めていた。もう一つ特筆すべき事は、AチームはDC経験者、BチームはDC未経験者でまとめられたことだろう。さてこれは吉と出るのか凶と出るのか・・・。

動機
 今回はもめた。何しろDCも3回目。シチュエーションは出きっている。もちろん今回も「移民」「学術調査」「流刑」などという定番も提案されたが、新し いのは「放浪惑星」「里帰り」という案が出たところか。「放浪惑星」はこの間放送されたNHKスペシャルが元になっていて、巨大惑星(ガスジャイアント) が3つあると、一つははじき出されるという話を思い浮かべた人が多かったようだ。
とは言え、もめたことには違いなく、「観光」だの「映画のロケ」だのという話が延々出た。一時期は「我々は宇宙サーカス団」という話で進みかけたが、「定年後の片道巡礼ツアー」という話も出た。しかもまとまらなかったので大迫さんの
「いろんな動機の人が乗り合わせてるんじゃない?」
という一言で
「じゃあ我々は民間宇宙船の乗客だ」
という話に収斂していった。つまり他の惑星系に行く初めての宇宙船。
「ミステリーツアーに参加しているのもいれば、純粋に観光したいヤツもいるし、映画のロケ隊も乗っている。カルト教団の巡礼者もいるだろう」
というわけである。さすがに放浪惑星はボツになったが。
「いいんだろうか、こんなネタで。」
そんな想いが一瞬頭をよぎったが、他に名案もないし、これで良いことにした。実はこの設定が後々相手チーム議長の頭痛のタネとなる。

メンタリティ・人数
 というわけで物見遊山的なスペースツアーが決まったわけだが、こういう初めての恒星間旅行に行くヤツは基本的に地球人と比べて好奇心が強いなのだろう。また
「お初大好き」
という設定も付け加わった。
次に人数を決めようとしたのだが、ここからが問題となった。実は先ほど目的を決めていたときに
「代々カメラマンとか、代々監督の家系があったりして」
「世襲制か~」
「代々ADってのはいやだよね~」
「カースト制だ~!」
という話があり、この「カースト制」というのがみんなの頭に刷り込まれてしまっていたのだ。しかも「客船」という設定が決まったときに「タイタニック」の話が出たのがさらに拍車を掛けていた。
「我々は貧富の差が激しい」
という意見が出た後、
「ハチみたいに上に立つ者と上には上がれない者がいる」
「遺伝的にやるのは難しいから、後天的な何かで決定されるようにしよう」
「入れ替えがあり得ない後天的カースト制度?」
「そうだけど、彼らはカーストだと思ってないんだよ。能力的にも差があるからそれが当然だと思っている。それで社会も安定している」
というところで安定した社会になるだろうという事になった。もしかしたら問題もあるかも知れないが、まぁ、細かい話はDCで気にしても仕方がないので割愛した。
では後天的に差が出来る理由を作らないと行けない。これは下の者同士でいつまでも下の層の者が生まれるという、地球におけるカースト制度の様な意見も出 たが、結果としては同じ時に生まれた兄弟の中で、最も先に親の与える餌(ローヤルゼリーか乳みたいなもの?)にありつけた者だけが上に立つ者になり、あり つけなかった他の兄弟は下の者になるという事にした。上に立つ者は知能が発達するかわりに力仕事は出来ない、下の層の者は知能は発達しないが肉体は発達す る。これで社会を支えていて、上の者は下の者の生活を守るのが当たり前、逆に下の者は上の者を支えるのが当たり前、と考えるようにした。
また社会を支えるためにはそれなりに兄弟が多くないと行けないので卵胎生とし、雌雄同体の上の者同士が子どもを作ることが出来るとした。つまり下の者は一代限りなのだ。人数はよくわからないが、上の者は1000人程度、下の者はその100倍程度と暫定的に決められた。

外見・船団
 さぁ、ここまでずいぶんともめたが、ようやく姿を設定する段階になった。またこれも一悶着あって・・・先に目的地を決める事にした。その結果、お初大好 きの我々としては全惑星い観光に訪れるのかだとうだろうと結論した。従って見つけている6つ惑星に6隻の宇宙船で行くことに。あともう1隻運搬船を連れて 行くことにし、全7隻の船団とした。
ここから姿の設定となるわけだが、
「我々の目的地ってやっぱり第2惑星なんですか?第3惑星が住みやすいってのはダメ?」
という一言が契機となった。
「つまり重力が弱いところで進化したってことなんだけど・・・」
「あ、それなら縦に細長い生物やりたい。」
「じゃあ、細長くしよう。直径10cmだったらどれくらいの長さで人間と同じくらいの体積になるのかなぁ・・・」
「5mくらいだね。」
というかたちで、直径10cm、我々は全長5mという姿であり、体の底からさらに5mほどのしっぽがあることにした、これが縦に立つときのスタンド役を果たし、移動を行い、さらには作業肢ともなるのだ。
しかしこれでは脳が発達するのかどうかがわからない。もっと太い方が良かったか?などと考えてしまった。梯子状神経という案も出たが議長権限で却下とな り、やっぱり上の者に関しては外見も異なるようにしようという案に落ち着いた。そこで上の者は直径が倍の20cm、体積を合わせるため長さは1.25mと した。これなら脳も入るだろう。それでも結構細長いぞ。
続いて目の位置。立体視が出来ないと不便だからということで2つ。下の者は縦に2つ。上の者は横に2つ。位置が異なるのはあとでヒラメやカレイのように移動するから、という理由を付けた。まぁ地球上の生物でもそういうのがいるんだから大丈夫だろう。
あと色。これは下の者は白、上の者は赤を始め、様々な色になるとした。

名称・コミュニケーション
 さて、設定の最後は我々の名前である。何となく上の者は太いので「フト」、下の者は細いので「ホソ」という名前が提案されたが、あまりにもわかりやすいということで上の者は「フト」のままだが、下の者を「シン」と呼ぶことにした。
同時にいくつかの言語体系が提案された。例えば
「上」を現すのは「フタ」、「下」は「シノ」
「タ」は「優れている」とか「短い」を意味する接頭・接尾語、逆に「ノ」は「劣る」とか「長い」を現す・・・など。
なお会話はしっぽというか作業肢による手話となった。長い作業肢がうねうねと電光掲示板のように次々と文字の形を現すのだ。
またフトは自力ではあまり遠くまで、速く移動することは出来ない。そこで通常は3体のシンに御神輿よろしく担ぎ上げられて移動する。いわゆる「騎馬戦方式」で移動することとした。
その他、基本的には同じ種族であるシンを解剖することが容易なため医学は進んでいるとか、技術の方面では力を強化するパワードスーツ的な分野は進んでいるとされた。
最後に呼称だが、自分たちのことはフトとシンの両方を合わせて「ボン」と呼ぶ。「ボン人」であるわけだが、これは1本2本という数え方から来たことは言うまでもない。ちなみに1人2人とは言わず1ボン2ボンと数える。

プレ・コンタクト
 ここからはボン人の1フトとして語ろう。我々の目的地は第2惑星。当然他の惑星に向かう船もあるのだが、重力はきついが暖かい第2惑星をあえて選んだ。 もしかしたら現住の生物なんかがいるかも知れないと期待してだ。もしそのような惑星がなさそうなら迷わず第3惑星を選んだのだが。
ところがもうあと2年で到着と言う段になって、いきなり第2惑星から人工のものと思われる電波を受信した。なんと既にそこには電波を操る生物がいるのだ!それはきっと知的生命体に違いない!しかしこの間までは電波など出ていなかったのに・・・先を越されたか?
お初大好きの我々としては惑星初乗りを逃しちょっと残念だが、しかし初めて他の知的生命体と接触できるチャンスだ。映画のロケ班はさっそく撮影の打ち合わせを始めている。まだ2年もあるというのにご苦労なことだ。
しかし取りあえず科学者が中心となる委員会が招集され、メッセージの解読が行われた。どうやらこれは素数を始め、数字や四則演算法のようだ。論理演算も送られてきた。さらに向こうは何を考えているのか彼らの辞書に相当するものをどんどん送ってくる。これは
「どうしても会いたい」
という強いメッセージであることがうかがえる。うーん、向こうは乗り気なんだ。よし、ではこちらもコンタクトをしようじゃないか。半年ほどそのような辞書を受け取った。よし、前段階として一応断った上、プローブを送ろう。
「プローブを送りました。」
すると行き違うように彼らは次に質問を送ってきた。内容は以下の通りだ。
「あなたがたは誰ですか?5光年先の星系との関係は?私たちは穏和な知的生命体です。ここに何をしに来て、どこに行く予定ですか?私たちの目的は調査し生き残ることです。」
うーん、なんだか変な文面だな。「生き残る」ってどういう意味だろう?しかしまぁ、ここで相手の心象を悪くしてもいけないので返事はしよう。
「我々はボンで穏和で知的な生命体です。その星から来ました。様々な目的の人が乗っています、例えば調査観光です。あなたがたの邪魔はしません。6つの惑星全部を回ります。」
当然質問も忘れない。
「ところであなたがたはいつからいるのですか?どこから来たのですか?どうやってきたのですか?その惑星には何ボンいますか?」
その後、プローブを送ったというメッセージに対する返事が来た。
「私たちにも敵意はありません。プローブは壊しませんが調べます。あなたがたの自然言語辞書を下さい。」
ん?辞書?向こうの言葉がわかるまでになっているのに、何で辞書がいるんだ?まぁ、でももう1年ほどで着いちゃうし、友好の印としてその場で渡すのがいいだろう。
「辞書は直接渡します。」
さぁ、あとは到着後にコンタクトを行うだけだ。正直言って重力がほぼ同じ第3惑星に行く連中がちょっとうらやましかったのだが、こういうコンタクトというおまけが付いたのであれば、第2惑星を選んだのは正解だったのかも知れない。それが証拠に第3惑星に行く連中も
「くやしくないぞ」
と言いながらも手話のはしばしにちょっと悔しさがにじんでいるように見える。

コンタクトその1
 さて、先方はコンタクト場所として第2惑星の衛星軌道上を指定してきた。第2惑星は我々にとって重力が強すぎるので願ったりだ。あとついでに
「出来れば無重力(無重量)下が望ましいが、もし人工重力を発生させる様な場合でもなるべく弱くして欲しい」
「広い場所での会見を望む」
という要望を伝えておいた。彼らの大きさは我々の3~4分の1しかなさそうなので、デッキのような所がありがたい。
こちらのコンタクトチームはフト11ボン、それを支えるシンと雑用のシンが50ボン、さらにカメラクルーのシンを3ボン連れて行くことにした。合計64 ボンであるから、結構な大人数だ。まぁしかし広いところを希望したので大丈夫だろう。当然連れて行くカメラクルーは、他の惑星に向かっている宇宙船の他、 母星にも中継することになる。こういう世紀の会見は放送しない手はない。
会見場に降り立つと先方は5個体が出迎えた。あれはフトとシンなのだろうか?どこまでがフトでどこまでがシンかはわからない。彼らの中で「全権大使」と名乗る個体が話しかけてきた。
「ようこそ、惑星キメトランへ。」
どうやらこの惑星は「キメトラン」というらしい。我々も友好の挨拶を返した後、過日の通信で約束したとおり、我々の辞書を手渡した。
このような儀式の後、早速話し合いが始まる。
「ところでどのようなご用事で?観光ほか、とありましたが・・・」
その通り。そういえばあまりにも目的が多岐に渡っているため、適当に答えていたのだ。
「その通りです。観光、映画の撮影、学術調査、移民、中には宗教的儀式としての巡礼という目的の者もおりますかな。」
どうやら相手は面食らったらしい。どうも戸惑っているようだ。
「観光とはどのように・・・」
「全ての船が全ての惑星を順番に回る予定をしております。そうですな、最初の1年でローテーションを組んでまわり、3隻はそのまま帰路に就きますが、他の3隻が映画撮影や研究のために残る予定をしております。」
相手がざわつく。何かあるのだろうか?そこでこちらから一つ提案を持ちかけてみる。
「そうだ。あなた方、我々の映画に出演しませんか?」
「は?あああ、あの、えええ映画というのは、いいい一体、どどど、どのようなものなのでしょうか?」
なにやら反応がおかしい。このようなしゃべり方は先ほどと異なるようだ。
「映画というのは、そうですな、映像芸術の一種です。まぁ娯楽的要素を多分に含んだ映像芸術ですな。」
この返答を聞いた5個体は集まって何かを始めた。
「いえ、その、今我々が行っているのは皆さんを歓迎する我々の儀式でして、決して今ここで相談しているわけではございませんで・・・」
なるほど。どうやら我々は歓迎されているらしい。カメラスタッフがその旨、注釈を加えて映像を放送している。
しばらくするとその儀式は終わった。
「そ、その映画とやらのサンプルをいただきましたら、持ち帰りまして、相談いたしまして、もし出たいという者がおりましたら・・・」
「わかりました。期待しております。」
「それでですね、移民というのは・・・?」
「ああ、我々の中にはこの星系の第3惑星に移住しようという者がおりまして。」
「第3惑星ですか?」
「ご迷惑ですかな?」
「い、いえ、第2惑星には・・・?」
「この惑星は・・・あ、キメトランでしたかな、は重力が強すぎるので移住には適さないと考えております。」
「しかし第3惑星は・・・」
「ああ、環境のことですね。心配ご無用。我々は惑星をテラフォーミングしようと考えております。」
「あ、あの、ももも、もしかして他の惑星も環境を変えようとか・・・特にそのかかか観光とかでもテラフォーミングを・・・?」
「いやいや、我々はそのままの自然を観光で見るために来ました。ですから出来る限りここの自然には手を付けない予定です。」
再びざわめく彼ら。先ほどの歓迎の行動を再び取っている。どうやら我々のこの方針は受け入れられているようだ。

コンタクトその2
 そしてさらに我々を歓迎してくれる行動をこの後連発してくれた。まずはこの話だろう。
「あなた方の母星にも観光に行ってみたいのですが、よろしいでしょうか?」
「は?ぼぼぼ母星にまでですか・・・・・・そそそ、それはちょっと持ち帰りまして皆と検討し、母星にも打診して訊いてみません事には・・・」
「いえいえ、ご迷惑でしたら無理にとは申しません。ご検討下さい。」
「は、はぁ・・・」
どうやら歓迎の行動を取っていることからもわかるように、彼らはきっと母星への観光を許可してくれるだろう。これは映画撮影にも大きな影響があるだろうし、生物とはどのような場所で進化するのかを知る大きな手がかりにもなろう。
続いてはこの話題だろうか。
「ところであなた方は皆同じ様な姿をしておられますが、フトなんですよね?それともフトとシンですか?フトだけだとするとシンはどちらに?」
「は?ふ、フトですか?し、シン?そそそ、それは一体・・・おい、辞書辞書。」
再び歓迎の行動。しかし何となくおかしい。歓迎の行動はいつも
「検討いたしまして・・・」
という言葉と対になっているはずなのが・・・?しばらくすると全権大使が語り始めた。
「フト、シンというのは・・・?」
「えー、フトはフトで、シンはシンです。」
「・・・はぁ・・・・・?」
どうやら理解してもらえていないようだ。その反応に周りの仲間が驚いている。もちろん私も驚いた。フトとシンがいるのは当然のはずなのに・・・?
そう思っていると、1ボンの仲間が別の視点から話題を切り出した。
「我々は医学が進歩しております。あなた方と技術交流をする上でもお互いに解剖用にシンを交換しませんか?」
「は?かかか解剖というのは、どどど、どのような行為を指すのでありましょうか?」
「解剖というのは個体の体を切り開いて分解し、内部構造を詳しく調べる行為でして・・・」
「ぶぶぶ、分解!?」
なにを驚いているのだろう?解剖して調べるには分解しないといけないのは当然ではないか。
再び歓迎の行動を取ろうとし始めるが、全権大使が言う。
「そそそ、それも持ち帰りまして、皆で協議しまして、その上で希望者がおりましたら・・・」
「大使、ダメです!」
なにやらもめているようだ。一体どうしたのだろう?歓迎の行動には違いなさそうだが・・・?
「えーい!俺の腕は作り物だ。持って行け!」
彼らの中の1個体がなにやら体の一部をはずして差し出した。どうやら「ウデ」というらしい。仲間達も喜ぶ。
「おお!これがウデか!」
「じゃあ、私は耳をあげます。ほら、耳ですよ。」
「おお!これがミミ!」
「やっぱり体全部はダメですか?」
「ええい!俺の体はどうせ全部機械だ!大切なところだけ外せば全部持っていってかまわん!」
「おお!なんて素晴らしい!あなた方の好意に甘えてばかりはいられません。どうぞ、シンです。3ボンほど連れて行ってください。」
「い、いえ、結構です。」
なんと我々の方のシンはいらないと言う。我々が一方的に彼らから体を提供してもらうだけになってしまった。私は思った。
「なんて心の大きな生物たちだろう。きっと彼らは彼らの星の中でもフト中のフトに違いない。」
こうしてボンのファーストコンタクトは終わった。

反省会
 実は相手は、母星での戦争に負けた側の者たちだったらしい。それが4度チャレンジして、4回とも調査隊が全滅しているこの惑星に第5次調査隊として送ら れたらしい。はっきり言って故郷の星にも未練はないし、送り出した側も「全滅したっていいや」てな感じで送り出されていたらしい。しかもたどり着いたらこ の惑星で生きていこうと母星との連絡を絶ち、そして苦労して体を改造(サイボーグ化)したりして何とか生き延びようとしていた。なんて健気な人たちだ!
ところがそこへいきなり7隻の宇宙船団!あわてまくり全滅覚悟の背水の陣で望んだコンタクト相手。辞書を送りひたすらごまをすり続け、何とか滅ぼされないようにと努力した相手・・・・・は観光客だった・・・。しかも映画に出ないかとかなんとか・・・後で聞いたが
「すっごいショックでした!」
の一言に尽きたらしい。もちろん「カルチャーショック」という意味もあれば「負けた!」と思う気持ちもあったとか。ま、シミュレーションだから勝ち負けはないんだけど・・・
さらにはサイボーグはOKでも遺伝子をいじったりするのは厳禁だったらしく、「解剖」というのはシャレにならない内容に抵触していたそうな。しかし解剖しないとサイボーグ化も出来ないよねぇ・・・?シンを受け取らなかったのも
「こんなのいらない!はやくこの生物と縁切りたい!」
という気持ちが強かったからだとか。誰かが言った。
「不幸だねぇ・・・よりにもよって観光客。DC1のヒュンヒュンとだったら仲良くやって行けたのに・・・」
まったく、この世はうまくできている。

追伸
 懇親会の後、新幹線に乗ろうと思い「みどりの窓口」へ・・・あ、あれ、閉まってる。仕方がない、券売機で・・・300円足りない!なんで朝1万円ではな く2万円下ろさなかったんだ!しかも銀行は全部閉まっている!ここは名古屋だろ?なんで駅前なのに24時間開いてる銀行がないんだ!泣く泣く交番でお金を おろせる場所を聞き、無事そのお金で切符を買ったのさ。
教訓:財布の中身はちょっと多めに。

 

機械化人側 向井淳さんのページ

SF2001アフターレポート ~二日目~

宇宙開発の部屋
 う~、書きたい。でも書けない。凄いネタだけど今は言えない。10月になったら喋ってもOKになる可能性があるんですよね?それまで待って下さいね。公開可能になったら書きます。
お詫びにと言っては何ですが、この会場でNASDAの野田司令より野尻さんへのお土産だとして回された北欧のお菓子。野尻ボードでも書かれていますが、「味付きのゴムチューブ」かと思いましたよ、私は。北欧にはお菓子持参だな。

にせ「ハードSFのネタ教えます」
 いつもは「いろもの物理学者」さんが紹介しているとのことですが、今回は洋行帰りだそうで、ピンチヒッターで菊池誠氏が紹介しておりました。これは物理 学などの論文で、ハードSFに使えそうなネタを教える、という前提で、とんでもなくいろものとしか思えない論文を紹介するというものです。

詳細はこちら

エンディング
 暗黒星雲賞の授与式、ファンジン大賞の授与式。そして星雲賞の授与式。これらの授与式が一通り
終わると、あとは閉幕だけだ。みなさん、30時間もの間お疲れさまでした。ゆっくりお休み下さい。

SF2001アフターレポート ~初日~

会場
 当日。幕張メッセにまでやって来てびっくりした。どう見てもSF大会とは関係なさそうな人たちがうろうろしている。しかし私もSF大会は初めてである。
「もしかしたらそんな人でも参加する大会なのかも知れない」
とも一瞬思ったが、ダフ屋までいる。
「SF大会でダフ屋?!」
そう、そんなわけはなかったのだ。どうやら近くでコンサートがあったらしい。そのチケット目当てのダフ屋だったのだ。しかし中には意味が良くわからず、
「SFないか、SFないか」
と言っているダフ屋もいたらしい(苦笑)。
で、本チャン。ポスターを宇宙作家クラブのブースに預けて、オープニング会場へGO!

オープニング
 いきなり笑わせていただきました。そうですか、間に合いませんでしたか、オープニングアニメ。Webで公開されるとのことですので、気長にお待ちしておりますね(笑)。
あと「酒」ネタ。主催者は「一応」って言っちゃ~いかんよなぁ~(笑)。20歳未満の未成年は酒はダメだよ~。ちゃんとそう言わなきゃ~。「一応」主催者なんだから~(笑)。

ライブ「教養」
 は、話の落としどころはどこ?結構ドキドキしてしまいました。しかし本当にいろんな事をご存じな方ですねぇ・・・小松先生。高千穂さんが軽くあしらわれ ている様に見える。あの内容を本にするんだから、確かにその努力の量には脱帽です。高千穂さん、鹿野さん、お疲れさまでした。

ファースト・コンタクト・シミュレーション
 盛況。こんなに入るとは・・・。主催者が
「言っておきますが、この企画は面白くありません!」
って言っても誰も出ていかないまま企画はスタートしました。
まずはCJ代表の大迫氏からFCSについてのいつもの解説。続いてゲストの小林泰三氏、林譲治氏の挨拶。林さんのコメントが良かったですね。
「私の挨拶はこの企画と同じくらい面白くないので、これで終わります(笑)。」

詳細はこちら

松本零士 モリ・ミノル漫画を語る
 そうか、小松左京氏は漫画でデビューしたのか。これは知らなかった。まぁ、ご本人が封印されていたのだから知らなくても当たり前であるが。
と言うわけで、小松さんは説得されましたので、小松さんが「モリ・ミノル」というペンネームで書いていた漫画は、来年早々に(復刻)出版されるそうです。

トランスジャンル作家パネル
 「瀬名秀明 SFとのセカンドコンタクト」との続きに近い企画。しかしその時間は上の話を聞きに行っていたので、こっちだけ見に行った。

結論その1
「パラサイト・イブ」にSFファンからの非難が集中したのは、「ハードSF信号」を受信したファンがハードSFだと思って読んでいたら、実はホラーだったのでがっかりしたから。

結論その2
SFファンは自分の基準に照らして受け入れられないものを「こんなのはSFじゃない」と言う癖みたいなものがあり、これはハードSFファンに顕著に現れる。

結論その3
瀬名さんが「SFの地位を高めよう!『SFじゃない』を封印しよう」と言ったのにほとんど反応がなかったのは、その前に散々やり尽くした後で、もうその話は蒸し返したくない、と思う人が多く、タイミングが悪かったからである。

などの結論が得られたのだと思うんですが、間違ってるかなぁ・・・?

お笑い架空戦記教室(途中まで)
 林譲治さんなどが参加していたこの企画。夜の8時からですよ。私はと言うと9時には小松左京さんの部屋に行くことにしていたので、その辺をぶらぶらした後、この企画をちょっと覗いてみた。が、ホントに覗いただけで何をやっていたのかまでは把握できなかった。残念。

小松左京氏の部屋へ乱入(宇宙作家クラブ)
 21:00から「宇宙作家クラブ」のメンバーで小松左京さんの部屋を襲撃。いや、小松さんの方から「若い連中と会って話がしたい」という提案があったも ので。押しかけたのは青山智樹さん、あさりよしとおさん、大迫公成さん、小川一水さん、國分利幸さん、笹本祐一さん、瀬名秀明さん、野尻抱介さん、藤崎慎 吾さん、松浦晋也さん、そして私(50音順)。
私は11:40頃までおじゃまして、その後國分さんと共に部屋を後にした。

宿でお休み
 宿に戻る。最初は会場で寝ることも考えたが、さすがにそこまで若くはない。でも私より年齢が上の人でも「徹夜した」とか言っているのは凄い!凄いとしか言いようがない!とてもじゃないが、私にはそんなパワーはない。宿でおとなしく寝ましたとも、ええ。
ただし、私の取った宿は最寄り駅が八丁堀。時間かかるんだ、これが。まぁ、仕方ないんだろうけどね。