月探査に関する懇談会 第7回会合

今日は会社を休んで、これに行って来ましたので報告です。

座長が遅刻ということで、いきなり5分以上遅れてスタート。まずは配付資料の確認。配布されたのは以下の通り。

資料1 ロボットに関する専門家打ち合わせにおける検討結果
資料1-1 高度ロボットによる月探査に関するヒューマノイド系ロボットの検討結果
資料2 月探査の考え方の見直しについて(案)
資料3 月探査に関する懇談会報告書(骨子案)
参考1 月探査に対する意識に関するアンケート結果
参考2 月探査ナショナルミーティングの概要
参考3 米国の宇宙探査に係わるオバマ大統領の所見(概要)

 

最初に資料1を長谷川委員が説明。
ほとんど資料の読み上げだったので、そのうちアップされるであろう資料に対して、公会議にリンクを貼ります。そっちを参照のこと。

続いて資料1-1を井上委員が説明。
月探査は科学の話が中心になりがちだが、ここでは技術フロンティアとしてのロボットということで考えた。もちろん現状の技術等を考えれば、JAXAが出しているローバー型が妥当。がしかし、その中でもしヒューマノイド型をやるとしたらどんなシーンが考えられ、何が技術的要素としてクリアが必要なのかを考えてみた。
その際、探査自体はローバー型に任せる。ヒューマノイド型は基地建設や維持を人間と協力しながら行う。プラス、人間が遠隔操作する分身としての利用というのが望ましい姿。

この分身は2015年くらいまでかけて地球上で実験を行う。可能であれば2020年を目標に月モデルを開発し、2025年までに月面での運用を行う、というシナリオを考える。

その際、こういった開発は現在の宇宙分野だけでなく、いろんな分野からの参入が求められる。また技術の継承や技術者の出入りも想定し、各モジュール間のインターフェースをキッチリと規定し、基盤化する。それによって、様々な分野の最先端の技術を取り込み易くし、各業界が成果を自分の会社に持ち帰り、応用しやすくする。
こういった体制を作る、まさにシステム開発体制のパラダイムシフトが必要だという主張。

毛利委員からももう少し詳しく等、他の委員からの同意も多かったが、これは宇宙以外の産業でも同じで、日本の場合、もっと他業種の成果を取り込み、交流が図られる、まさに今回提言されたシステム開発体制のパラダイムシフトが重要になると考えられるので、このプロジェクトがそのモデルケースになると良い。

 

すみません、続きはまた明日書きます。

金星探査機「あかつき」、小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」報道公開

事情により1週間延びていた「金星探査機『あかつき』、小型ソーラー電力セイル実証機『IKAROS』報道公開」が、JAXAの相模原キャンパスにて行われました。今回は会社を休み、宇宙作家クラブのメンバーとして取材に行って来ましたので、報告したいと思います。

9時半から受付を開始し、10時から始まった今回の報道公開ですが、まずは会議室にて20分ずつ、「あかつき」「IKAROS」の順番で、その概要説明と質疑応答がありました。

「あかつき」は金星の大気運動を主に調査する為の探査機です。特に「スーパーローテーション」と呼ばれる秒速100m以上の風が常に吹いているという、地球とほぼ同じサイズの惑星であるにもかかわらず、あまりにも地球と異なる大気運動が、一体どのような理由で生じているのかを突き止めるのを主目的としています。他にも「子午面循環はどうなっているのか」「雲はどうやって作られるのか」「雷は発生するのか」「活火山はあるのか」を調べることを目的としています。

もちろん、単に観測して知見を広げるわけではなく、スーパーローテーションにしても幾つかの仮説が既に立てられているので、これらを検証するためにはどのような観測機が必要なのかを検討した上で、今回の目的のために最も適した観測機材を搭載しているのだそうです。

今回は5台のカメラと、電波掩蔽観測のための基準信号源の6つの観測機器を搭載しています。
「1μm」「2μm」「10μm」の赤外線領域を観測する3台のカメラは、それぞれ「地表付近まで観測」「金星の雲の下」「雲層上層部」を撮影できるようにして、様々な高度での風の動きを調査します。
紫外線イメージャーは雲の形成に関わる二酸化硫黄などを調査します。もちろんこれは雲の形成に関わるわけですから、雲頂高度での風速分布を求めることが出来ます。
雷・大気光カメラは高度100km付近の高層大気を観測します。またこのカメラは32μ秒の高速露出が可能になっていて、雷放電発光が存在するかどうかも調査します。
その他の4台のカメラについては1時間に1回画像を撮る事になる予定だそうです。この辺は「ひまわり」など、地球の気象衛星が観測している周期と同じだそうです。あまり短い間隔で撮影しても必要な情報はあまり増えないので、この程度のインターバルで十分だろうと。

さて、この「あかつき」ですが、5月18日に打ち上げられた後、予定通りだと12月5日(?)に金星の周回軌道に乗る予定です。軌道は近金点300km、遠金点8万kmという楕円軌道に乗ります。軌道周期は30時間です。
この軌道を選択したのは、探査機が遠金点側にいる20時間は、スーパーローテーションの移動速度と探査機の移動速度がほぼ一致するため、大気の同じ場所を追いかけながら撮影することが出来る上、近金点に近い所では金星にかなり近づくため、クローズアップしてより高い解像度の映像を得られるためだそうです。

 

続いて「IKAROS」です。こちらは「太陽ヨット」だと思えば大体合っています。太陽からの光の圧力「光圧」を受ける帆(セイル)によって、太陽が輝いている限り力を受けて加速を続けることが出来るものです。

今回はその実証を世界で初めて行うのも目的としています。特に月軌道よりも遠い深宇宙での実証は例がありません。
またセイルを広げるのであれば、折角の大面積を活用しない手はないだろうということで、表面に太陽電池パネルを貼り付け、電気もこれによる発電でまかなう実証も行う予定になっています。

特に将来は木星探査機をやってみたいらしく、木星までの加速はセイルを使って行う予定だそうです。ただし、木星の周回軌道に乗せるためには太陽光の光圧だけでは難しいので、自由に噴射できるエンジンが欲しい。そのため、「はやぶさ」にも搭載したイオンエンジンを使うのが良さそうだという結論になっていて、このイオンエンジンを動かす大電力を作るのに、セイルに貼り付けた太陽電池パネルを使うのだそうです。つまり推進系はセイルとイオンエンジンのハイブリッドが有力だと考えていて、そのための実証を行うわけです。

ミッション自体は、ミニマムサクセスがセイルを無事に展開できるまで、フルサクセスはセイルによる加速と軌道制御が出来ることです。これは半年で達成する予定ですが、もちろん寿命は半年以上になるはずですので、様々な軌道制御技術を試すのと、薄膜太陽電池の劣化試験、惑星間空間のダスト量の観測を行う予定になっています。

さて、概要説明後は全体を4班に分けての別行動です。放送局と新聞は先に撮影に行ってしまいました。彼らから突っ込んだ質問が出ることはないだろうという事なのかもしれません。

逆に雑誌、Webメディア、そして作家陣は10時40分以降は12時頃まで、技術説明員による質疑応答が行われました。ここは遠慮無く、マニアックなところまでガンガン質問が飛びます。先に書いた内容にも、すでにそのマニアックな質問の一部を盛り込んでいますが、まぁ、そこはよしとしてください。時間があれば、もっとマニアックな内容は改めて書いていこうと思います。

その後はクリーンルーム見学です。ここはカメラを持ち込みましたので、写真による解説をしていきましょう。


クリーンルームを上から。手前が「IKAROS」、奥側が「あかつき」

 


金星探査機「あかつき」

 


「IKAROS」

 


クリーンルーム内

 


「あかつき」と「IKAROS」

 


「あかつき」全景

 


蓋の付いているのは「スタートラッカー」。2基のスタートラッカーと、太陽センサー(太陽がどちらの方向にあるのかを調べるセンサー)で、3方向を確認し、自機の位置を確認できるようになっている

 


左側、縦に3つ並んでいるのはカメラ。上から「中間赤外カメラ」「紫外線イメージャー」「1μmカメラ」
上に折りたたまれているのは太陽電池パネル

 


太陽電池パネルの本体接合部アップ。360度自由に回転できるようになっている。左右のパネルは独立稼働できるが、別々の方向を向ける意味はないので、基本的には同期して回転するとのこと。

 


「IKAROS」全景。真ん中の黒い棒は、セイルを抑えているバー。セルを展開するときには、最後にこのバーが開くことで展開を完了する。

 


右側の方に写っている四角いものは、先端マスというおもり。実証機は回転しており、この先端マスのロックを外すと、遠心力で本体に巻き付けているセイルが延びていく。これが90度ごとに4つついており、セイルが十字に延びきった後、バーが外れて、四角に展開する。

 


キチンと展開できたかを確認するカメラ。2つ用意されている。

 


おまけ。「あかつき」のフェルトで作られたマスコット(?)

 


別アングルから

宙博2009

11時にはものすごい並び方で、1時間待ちとまで言われた「宙博2009」。

仕方がないので、ちょっと空くまで上で行われていた「大江戸骨董市」をふらふらと見て回り、江戸切り子のグラスに思わず手が伸びそうになったり、焼 き魚用の陶器を探したりと、結構面白おかしく見て回りました。

また、昼食もその辺に出ていた屋台のパン屋でメロンパンとカレーパンを買ってもぐもぐ。骨董市を見ながら食べておりました。

一通り食べ、見て、みんながお昼ご飯を食べに出てくるであろう13時に会場へ戻ってみると、さすがに列も短くなっているではないですか。

「これならそんなに待たなくても入れるか な?」

と並び、30分ほどで入場でしました。

しかし会場はそんなに大きくありません。いや、はっきり言って狭い。昨年パシフィコで行われた国際航空宇宙展なんかと比べると、面積で10分の1程 度。金額は高いのに見るところがない。いかがなモノか? って感じでした。

とりあえず、NTTファシリティーズのブースで知り合いと雑談し、ストラップをもらったりしておりました。

その後はまず、発電衛星計画であるSSPSの展示コーナーで研究の進展具合などをいろいろと質問します。とりあえず、マイクロ波で送電するところは小規模な実験では技術の確立は出来つつあります。ただし、衛星からの送電というのはまだないわけで、当面の目標は低軌道に打ち上げた実験衛星と地上に作られた受電設備との間でキチンと電力の送受信が出来るようにすることだそうです。

受電設備は高調波の発生などもありますので、それを防ぐ回路設計も必要ですが、やはり都心部には作りにくい。しかしそんなに面積を取れる土地も日本にはないので、海上、特に無人島を核として周辺に構築するのが良いかもしれない、ということでした。もちろんフロートだって有力な構築方法なんですけどね。

また、本番はやはり静止軌道に投入したい。しかも原子力発電の代替を考えるなら、寿命が30~40年にならないと、電力会社としては踏み切れないだろう、ということで、メンテナンスをどのようにするのか? というのが大きな鍵になるだろう、と。
それと、静止軌道にそれなりに大きな衛星を置くことになりますので、いろんな機能を持たせて場所を上手く確保することを考えないといけないし、他の国との関係や電波の周波数割り当ての調整などを考えると、やはり東アジアの国々で協力して開発・設置した方が良いだろうとのことでした。かなり政治的な立ち回りをうまくやらないと、技術的には何とかなったとしても実現にこぎ着けるのは難しそうです。

そしてTMTの コーナーで質問&雑談。

うーん、参加するとすると、分担金は300億円ですか。すばる望遠鏡の400億円よりは安いですが、こういうのって、ホントにそれで収まるかどうかはわからんもんなぁ。

一応、研究テーマとしては、宇宙最初期の天体の発見と、地球型惑星の直接撮影になるだろうとのこと。ま、そりゃそうだな。とりあえず、最短で2018年完成。しかし、たぶん2020年以降にファーストライトになるだろうとのことでした。

 

以上で終わり。

でも、あの内容なら来年は行かなくても良いかな…

JAXAシンポジウム2009

今日は会社を定時で上がって有楽町のマリオンに入っている朝日ホールへ走ります。目的は18時半から始まる「JAXAシンポジウム2009」へ の参加です。実は、ずいぶん前に申し込んでいたのですが、そのときに返ってきているはずのメールが見あたらない…仕方がないのでWebサイトで場所を再確 認し、会場に向かいます。途中、最も会場に近いとされていた地下鉄の7番出口が封鎖されているというトラブルにも巻き込まれましたが、何とか開始5分前ま でには席に着くことが出来ました。なんか満席状態で、ものすごく人が多かったんですけどね、会場。

さて、偉い人の挨拶があり、JAXAの昨年度の活動内容がビデオで流された後、今年度の事業計画が報告されました。とは言っても大きいのは国際宇宙ステー ションの「きぼう」モジュール完成、2名の宇宙飛行士が今年度もこれから宇宙へ行くこと、そして、この宇宙ステーションへの無人補給機「HTV」の初号機 が9月11日に打ち上げられる予定になっていることくらいでしょうか。
JAXAとしての新規の衛星打ち上げは来年度までありません。今年は内閣府と防衛省が主管の情報収集衛星打ち上げくらいじゃないですかね?私が今聞いている範囲だと。

JAXAの話に戻しますと、HTV初号機は食料・衣料・船外実験装置を輸送する予定で、国際宇宙ステーションとは自動ドッキングせず、ロボットアームで掴んでもらい、ドッキングさせるという手法を採るようです。
そして既存に衛星に関しては、直近に打ち上げられた「いぶき」は5月に公開した観測データが地上のものと傾向があっていたため、おそらくデータの信頼度は 大丈夫なんだろうと判断されているそうです。今後はキャリブレーションをもう少しやり、観測精度をあげていく努力をするんだそうです。

先日、宇宙からの七夕メール送信実験を行った「きずな」は、今度は7月22日に、硫黄島から皆既日食の中継(あくまでも情報の伝送実験)をやるとのこと。

来年度以降には新しい衛星の打ち上げが予定されていて、一つはGPSを補完する準天頂衛星、そしてもう一つは金星探査機PLANET-Cです。現在、両衛星とも組み立てと試験が行われている最中で、大きな遅れはないとのことでした。

続いて第2部はトークセッション。フリーアナウンサーの草野満代さんが聞き手となり、宇宙飛行士の向井千秋氏、天文学者の中川貴雄氏とトークを行いました。
中川氏の話は、すみませんが割愛させてください。とりあえず彼が話したのは
1)天文学は「我々はどうやって生まれたのか?」「人類はひとりぼっちなのか?」を解き明かす学問である
2)日本の宇宙科学は様々な探査機や天文衛星で支えられている。特に天文衛星は現在「ひので」「あかり」「すざく」の3衛星が様々な波長で宇宙の謎を追いかけている
3)ダークマターの正体は皆目見当もつかない
4)今後は電波天文衛星「ASTRO-G」、X線天文衛星「ASTRO-H」の計画が承認されている。氏個人としては赤外線天文衛星「SPiCA」計画を策定中

というあたりです。またそのうち詳しく書くかもしれませんが、今日のところはこんなもんで。

さて、時間を少し巻き戻して向井氏の話をしましょう。
氏が室長を務める「宇宙医学生物学研究室」は2007年に出来たばかりの新しい研究室です。それまではNASDA以来、宇宙飛行士を元気に送り出して、無 事に帰ってこさせるという体調管理の部門はあったそうですが、宇宙での知見を地球での医療などに役立てようという部署はなかったそうで、それを設立したの だそうです。

この研究室の研究領域は以下の通りです。
1)生理的対策
2)精神心理支援
3)放射線被曝管理
4)軌道上医療システム
5)宇宙船内環境

1)について。地球の10倍くらいの速度で骨粗鬆症が進行するため、宇宙飛行士は地上では健康な状態でも、宇宙に行くと病気もどきになる。戻ってくると病 気もどきから健康に戻る。これを短期間で見ることができるので、これを研究すれば骨粗鬆症の解決方法が見つかるかもしれないと言います。
他にも高齢者健康管理、健康増進への活用、予防医学への応用などが考えられる分野です。

2)は精神心理面対応に応用できます。例えばストレス対策への応用、不眠対応などですね。
3)は航空機の国際路線に搭乗しているパイロットやキャビンアテンダントの健康管理に応用できます。同じ様な状況にあり、白内障の発症が職業病となっている部門でもあるそうですので。
4)なら遠隔地医療。宇宙には医者を常駐させられないので、地上から健康管理などを行う必要があります。これは医者が常駐していない離島などでも使える技術になります。
5)は、バクテリア環境の制御をどうするのか?などが対象になります。飛行士の抵抗力が落ちると、善玉菌でも悪さをしてしまうため、例えば宇宙食の研究から「食の安全・安心」などの研究が出来ます。それにより「安全な食品製造」「健康機能食、災害食」「環境に優しい容器」などの開発に繋がるでしょう。
また他にも「産業保険の充実」「長時間勤労者の健康管理」「有害環境リスクからの保護」「メンタルヘルス対策」など、閉鎖空間に起因する様々な問題への対策になるはずです。

これらを実証するため、現在宇宙に行っている若田宇宙飛行士も実験に参加しているそうで、「ビスフォスフォネート(骨粗鬆症の治療薬)で予防できるのか?」や、「軌道上遠隔医療の技術検証」などが現在進行形で行われています。
いずれにせよ、宇宙に人間を送ることは、ものすごいお金がかかるのも事実ですが、こういった地上ではなかなか出来ない状況が、我々の生活を補助するのに新 しい知見をもたらし、必ずや使った分大金は返ってくるということが、大変重要な点であることを認識しなければいけません。

「満天」試写会2009夏

 今日は午後半休をいただき、池袋にあるサンシャインへ。ここにあるコニカミノルタ・プラネタリウム株式会社直営のプラネタリウム「満天」の試写会にやってきたのです。明日から上映が始まる番組を先に見ることが出来ますので、今回は会社休んでまで観に来ました。
毎回、試写会のお誘いをいただいていますので、本当はその都度やって来たいのですが、さすがに仕事の締め切りが重なったりで、毎度毎度というわけにはいかないのが難点ですね。

さて、ネタバレは良くないので中身には触れませんが、今日観た番組3本+ショート番組1本の雑感をご報告させていただきます。

全体的には
「さすが『満天』」
と言いたくなるような、クオリティの高い作品に仕上がっています。集客を考えるなら、ハードウェアもソフトウェアも金をけちっちゃいけないし、どんな層をターゲットして番組を作るのかを明確にしなければいけません。その辺は5年間の積み重ねは伊達じゃないな、と感じました。
古いスライド投影機だけで、子どもだまし(子どもすらだませないレベルですが)のキャラクターを使った番組なんぞはやりません。またやって来たくなるような設定・選曲などは、他の館も見習ってほしいものです。

では続いて、個々の番組の感想を。

ショート番組「太陽が消える!? 7・22皆既日食」
奄美大島で日食を観たら?というコンセプトで制作された番組です。まぁ、日食の様子がドーム全体で表現されますので、なかなか見応えがあります。一般の方だと、日食を現地まで観に行った気になりそうですね。
そしてやっぱり、日食が起きるときの太陽・地球・月の位置関係をわかりやすく解説するには動画に限ります。しかもドーム内での全天映像は、自分がその視点に立って見下ろしたり、見渡したりできるのが最大の魅力です。こういう映像はわかりやすくて良いよなぁ、と思いましたね。ドームには静止画ではなく、やはりこういう映像が似合うんですよ。

プラネタリウム番組「銀河の輝き 天の川 宮沢和史とめぐる星空の旅
THE BOOMが20周年、「満天」が5周年ということで、提携して制作された番組です。THE BOOMの宮沢氏が語りを行っている番組なので、ファンの方は必見かもしれません。全体的なクオリティーも高いです。
ただ、個人的に難点を2つ。これは宮沢氏の声の質のせいなのか、音響設備のせいかはわかりませんが、所々、BGMと語りの声が不協和音になってしまっているところがあり、聞き取りにくい箇所があります。ノイズが入ってしまったような印象を受けてしまうのです。もしかしたら一般のお客さんにはわからないレベルなのかもしれませんが、元本職としては「ちょっと何とかしたいなぁ」という印象を持ちました。
もう1つはシーンンとシーンの間の余韻があまりないこと。BGMを絞るフェードが短い。そこにすぐに次のBGMが乗っかってきて、語りが始まってしまうのです。何カ所かは
「もうちょっと、あと2秒の間があれば余韻が楽しめるのに」
と思ったところがありました。全体的なクオリティが高いだけに、少し元シナリオライター、元演出家としては不満の残る作品でした。


ヒーリング番組「星のせせらぎ
 アクアヒーリング
「水」をテーマにしたヒーリング番組です。番組中、シーンに合わせて2種類のアロマの香りが場内に流れます。これは専門の会社に依頼して、シナリオを読んでもらったうえで、合いそうな香りを調香してもらってるんだそうです。なかなか良い演出ですね。
しかし内容は…うーん、これは意見が分かれるところだなぁ。個人的にはイマイチ。水樹奈々さんの語りですので、ファンの方は見られればいいと思いますが、天文ファンには物足りないでしょう。
また純粋に「ヒーリング」を求めてきた方にも、しんどいかもしれません。理由は、全体的に、5分程度のショート番組を単純につなぎ合わせた様にしか見えない点です。それぞれが短くてゆったり出来ないんですよね。その上、シーンとシーンがあまりきれいにつながってなく、唐突に話が飛んでしまう印象を受けてしまうのも、イマイチな原因かもしれません。
とはいえ、これも一般の人にはわからない程度なのかもしれませんけど。私、気にしすぎかな?

特別番組「銀河鉄道の夜」
この「満天」で初上映だった本番組。当時は星はプラネタリウム本体で映し、それ以外の部分をCGにしていたんだそうです。その後、全国展開する際に降るCGに作り直して配給。今では海外も含めて55館で上映される番組になったんだそうです。
今回「満天」では、このフルCGヴァージョンを初めて上映するんだそうで、制作者のKAGAYA氏が挨拶を行いました。また、次回作の予告編が1分間ついています。しかも「満天」のシステムは映像クオリティの高いドームに仕上がっていますので、他の館で観られた方も、是非再度見比べてみてはいかがでしょう。ちなみに私は、今日のが3館目だったりします(苦笑)。

 

ということで、3時間かけて3本半を観てきました。明日からはお金を払えば誰でも観る事ができますので、お時間のある方はちょっと覗いてみてください。
 

DAICON7レポート第2日

2008/8/24(Sun)

SF大会2日日です。と言っても2日間しかありませんから最終日なんですけどね。
2日目は10時からスタートです。初日よりも1時間早く実家を出て会場へ。

南海難波駅で、大阪市立科学館の長谷川学芸員とばったり。彼は今日のセッションで「学天則」のことを話すためにゲストとして呼ばれていますから、一緒に会場へ。というか、私もそのセッションに出る予定なんだから、一緒に行くのは当然なわけですが。

今日の参加セッションは下記の通り。

メディア・ロボット講座
宇宙作家 A.C.クラークを語る
”ニ”はニセ科学の”ニ”

でした。

メディア・ロボット講座
「ロボット」というものが取り上げられた作品、特に映像作品を中心に「ロボットとはどのように見られていたのか?」という第1部。続いてSF雑誌上で描かれたイラストに登場するロボットの変遷。そして第3部が学天則だったわけです。
「フランケンシュタイン」や「メトリポリス」などの有名どころから、まぁ
「そんな作品があったのか!」
と言いたくなるような作品までが目白押しの第1部。
そして初期は触手的な腕が多かったというSF雑誌上のイラストで描かれたロボット。宇宙人が持ち込んだ単なる機械として描かれていたり、「ロボット三原則」成立後のスタイルの変更など、時代時代によってロボットの扱いが変わってきたことを物語る内容で、これも面白かったですね。
最後は学天則ですが、これはまぁこれまで大阪市立科学館で聞いていた内容と大体同じ。制作者の西村真琴がどういう人物だったのか?学天則のお披露目やその後の公開の様子はどうだったのか?学天則はどのようにして動いていたのか?そして学天則に込められた想い・・・などなど。詳細は科学館のプレスリリースなどでいろいろ紹介されていますから、そちらをご覧ください。

 

宇宙作家 A.C.クラークを語る
2つ目はこれ。まぁ、宇宙作家クラブが主催ですから行かないわけには、ね。
内容は宇宙作家クラブ所属のメンバーが9人ほど壇上に上がり、クラーク作品への自分なりのとらえ方や、クラークの人となり、クラークの残した功績などを語り合っていくという内容でした。あの人数がいれば、適当に振っていくだけでも時間いっぱい使い切っちゃうわけですから、ある意味内容の濃い、良いセッションになったのではないでしょうか?しかし・・・本番の数日前まで言い出しっぺがほったらかしてたとは思えない素晴らしい内容は、さすが普段から物書きをしている方々だなぁ、と思いました。

 

”ニ”はニセ科学の”ニ”
えっとですね、まぁタイトルの通りです。要は疑似科学とか似非科学とか言われているものの内容を吟味して、おかしいだろう?と笑ってしまおうという内容に近いのですが・・・
実はSFもいろいろと今の物理現象を否定するようなモノを設定して物語を書くことがあります。しかしそれは物語を面白くするための仕掛けであって、それを
「本物です」
などと主張したりはしないわけです。でもそのネタの範囲では矛盾がないように、ものすごくきっちり理論を突き詰める。その科学的態度たるや半端じゃありません。こういうのは、というか、こういうのを「疑似科学」と呼ぶべきだろう、という話でした。
それに対して
「水に良い言葉をかけると綺麗に結晶として凍る」
などというのは「ニセ科学」と称するべきだろう、と。水の例で言うと、実際に綺麗な結晶になる再現率が極端に低い。条件が上手くいかなければ決して再現しない。こんなのは科学じゃない。
しかも「綺麗」=「良い」とは限らないのがこの世界。綺麗でも毒を持っている生物はいるわけで、
「綺麗ならOK」
ってのは論理的にもおかしいだろう、と。ついでに言うと学校の道徳の時間でこれが教材として使われている例も多いそうで、そういうのが理科離れとか学習離れを加速してるんだろうなぁ・・・

あと、ちょっとショックだったのは「揺籃の星」「黎明の星」で、ヴェリコフスキーの「衝突する宇宙」をネタにしていたJ.P.ホーガン。あれはネタとして書いてるんだと皆信じていたわけですが、堺三保氏曰く
「残念ながら本気らしい・・・」
とのこと。よくよく考えれば名作と言われる「星を継ぐ者」にはじまる巨人シリーズ4部作や「創世記機械」なども、結構なトンデモ理論が使われているわけで、どうもホントのトンデモさんではないか?という疑惑が。
しかも難儀な話で、トンデモなネタなのに、しかも本人本気らしいのに、面白いんだこれが。困ったモンだ。

 

 

さて、このあと表彰式と閉会式だったわけですが、翌日は東京で仕事があるため早々に退散。18時過ぎに新大阪を出る新幹線で小田原まで・・・だったのですが、大雨で新幹線が動かず。結局、家にたどり着いたのは月曜日の9時。さくっと会社には有給休暇の申請をして、家で寝てましたともさ。
最後の最後でケチが付いたなぁ・・・

DAICON7レポート第1日

2008/8/23(Sat)

SF大会初日です。11時から開会式が始まる予定でしたので、それに合わせて実家から移動します。しかし!仕事の原稿が書き上がらない・・・しかも実家からどうやってもメールが送信できず、結局地下鉄の中から送信するという始末。そして残る絵の貼り込み作業を岸和田に向かう地下鉄御堂筋線と南海電車の中でやっていたところ、なんと途中でバッテリー切れ(泣)。作業が中断してしまいます。そういや家で電波状態の良いところを探して、ACアダプター差さずにうろうろしてたからなぁ・・・

やむを得ず会場最寄りの岸和田駅で降りた後、商店街の中にインターネットカフェがあるのを発見して、急遽飛び込み、電源とネットワークの線を確保して作業を再開。何とか11時頃に無事送信を終えました。

会場に着く頃にはオープニングが始まっており、ちょうど岸和田市長の挨拶が始まったところでした。残念ながらオープニングムービーは見そびれました。どこかで見られるところを探すしかないですな。というか、DVD買おう。

今日の参加セッションは下記の通り。

机上理論学会発表会
サイエンス・イマジネーション 科学とSFの最前線、そして未来へ
FCS 確率論的時限式世界構築とニイハオ

でした。

残念ながら梶尾真治の「小さなお茶会」には定員オーバーで参加できず。

机上理論学会発表会
まぁ去年も参加したわけですから2年連続です。内容はと言うと、いろんな事を題材に徹底的なこじつけ解釈を行って笑いましょうというもの。だから「机上理論」なわけです。
今年のネタで面白かったのは
「浜辺の歌」
の幻の3番、4番をネタに、実はこれが抜け忍と里から放たれた追っ手の壮絶な戦いを描いたものだった!という話ですかね(笑)。気になった方は是非彼らのネタを見てみてくださいな。

机上理論学会Webサイト

 

サイエンス・イマジネーション 科学とSFの最前線、そして未来へ
続いて訪れたのがこれ。「小さなお茶会」には参加できなかったので、こちらへ回りました。
昨年の「NIPPON2007」で行われた企画が元になって出版された同名タイトルの書籍をネタにした企画です。
本はロボット、脳、言語、意識などをテーマにした科学者8人とSF作家の対談集と言って良いでしょう。
川人氏と岡ノ屋氏の研究に関しては以前に別のシン ポジウムで聴いたことがありましたので、この企画の終了後に購入した本は、その他の6人の発表を興味深く読ませていただきました。特にパラサイト・ヒューマン・システムはなかなか面白い研 究ですね。
科学はSFを越えられるのか?科学はSFにどれだけのインスピレーションを与えられるのか?
逆にSFはどこまで科学のパラダイムシフトに貢献できるのか?SFは科学を啓蒙する切り札になるのか?
そんな熱気がひしひしと伝わってきます。うん、私もなんか書こう、久しぶりに。少なくともそう思えるパワーのある本ですね。

企画はその辺を中心に、iPS細胞の研究者も前に呼び出されての分子生物学に近い話が多かったかな?物理屋さんにはちとしんどい内容でしたが、それでも面白かった。


FCS 確率論的時限式世界構築とニイハオ
私も所属するCONTACT Japanの企画です。しかも企画時間2コマをぶち抜きという、すごい状態の内容。
今回はコンタクトに使用できる語彙が限られているという前提で、どうやれば限られた語彙で相手と誤解の無いように意思疎通が出来るか?というもの。やっぱりなぁ・・・ボキャブラリーが足りなかったり、相手との共有項目が少なかったりすると、うかつな事をメッセージで送るととんでもない誤解を生む。どうもそれを狙っていたみたいですが、よく考えられてるなぁ・・・
今回は引っ越しというか転勤騒ぎでそれどころじゃなかったから事前打ち合わせには参加できなかったんですよね・・・

 

さて、2日目は次回。宇宙作家クラブのネタも何本かあるのですが、別で回らないといけないセッションもあるし・・・ということで、いろいろ悩みつつ参加セッションを決めたのでした。

DAICON7レポート第0日

当たり前の話ですが、1年ぶりのSF大会です。今年は「第47回 日本SF大会 DAICON7」ということになりました。お久しぶりの方々も多くいますし、宇宙作家クラブのメンバーやCONTACT Japanメンバーも含め、ちょくちょくお会いする方々も。

さて、そんなわけでDAICON7の参加レポートを書いてみたいと思います。

 

2008/8/22(Fri)

SF大会に先立つオプショナルツアーが行われました。今回のツアーは「大阪の陸、水、宇宙、地下を網羅する」みたいな感じのツアーでした。スケジュールは以下のような感じです。

13時  シティプラザ大阪集合
13時半 水陸両用バス「チャレンジャー号」で大阪遊覧の旅へ
15時頃 大阪市立科学館着。自由行動
17時  全天動画上映会
18時半 「堀晃と行く梅田地下オデッセイ」 スタート
19時半 懇親会

まずは堺筋本町駅から少し歩いたところにある「シティプラザ大阪」へ。ここに13時までにたどり着くため、7時前に本厚木の家を出発。小田急で小田原に向かい、そこから8時9分初の新幹線「ひかり」で新大阪まで向かいます。新幹線の中では相変わらず仕事をやっていたわけですが。

さて新大阪に到着しますと、先月と異なりかなり涼しくなっています。あとで訊いてみると盆明けからは涼しくなっていたのだとか。これはありがたいと、大阪駅付近で買い物をしたあと、徒歩で大阪市立科学館に向かいます。夕方には再度やってくるわけで、私の名前でいろいろと申し込んでいる兼ね合いもありますから挨拶しておく必要があるだろうと。

その後、一旦大阪事務所に立ち寄って必要なデータを引き渡したあと、徒歩でシティプラザ大阪を目指します。

 

ここで堀晃氏とばったり。ちょっと話をしたあと中に入り、受付を済ませます。スタートは13時半という事でしたので少し待ち、やってきた水陸両用バスとやらを皆で撮影しまくり、と。

 

基本はトラックだそうで、それを水陸両用に改造したのだそうです。名前は「チャレンジャー号」。たぶん私だけではなく、ツアー参加者全員の頭の中をイヤな予感がよぎったことでしょう。何故って?そりゃ、1986年に打ち上げ直後に爆発したスペースシャトルが「チャレンジャー号」だからですよ。うーん、脱出方法だけはちゃんと確保しないと、とか(苦笑)。

35名の参加者を乗せ、シティプラザ大阪を出発した「チャレンジャー号」は大阪城の周りを回りながら、大川に面する毛馬桜之宮公園へ。私が毎年、桜の花見に行くところです。その途中、大阪城が建物の間からチラチラと見えます。

「チラ見がいいんです」

とは、バスガイドさんの弁。何度か大阪城をチラ見していたら、そのうち

「次はサービスです」

とのこと。ふーん、まぁ何回もチラ見たからなぁと思っていたら、その場所にはガソリンスタンドがあり、「サービス」という看板の向こうに大阪城がっ!ちょっとヤラレタ感が漂い、車内でもウケていました。

さて、毛馬桜之宮公園に到着した「チャレンジャー号」は、その一角から大川へざぶん!

 

約30分ほどのクルーズを行います。

 

再度陸に戻り、そこで小休止。皆して運転手さん達を取り巻いて質問攻めにします。

「エンジンは水上、陸上で共用なのか?」

「船体はどのようになっているのか?水上ではタイヤは云々・・・」

などなど。写真を撮る場所ももう普通の観光客と明らかに違います。やたらめったら車体構造を撮りまくりです。

 

まぁ、私もあんまり他人のことは言えないわけですけどね。スクリューとか撮ってるし、運転席も何枚も撮ったし。

 

再び走り出し、15時過ぎには「大阪市立科学館」へ。

 

ここで、閉館までの間は自由行動となります。メインは閉館後ですから。何人かはプラネタリウムを見に行きます。その他のメンバーは展示場をふらつき、1階の古い工業製品を展示しているコーナーで

「きっとみんな、ここに来ると『これ持ってる』とか『なつかしー』とか言って、動かなくなるんでしょうねぇ」

と何人かで喋っていました。すみません、私も動かなかった一人です(苦笑)。

 

閉館後は再度プラネタリウムドームに移動し、バーチャリウムIIのデモ映像などを見たあと、「かぐやの打ち上げ動画」を笹本祐一氏の解説と共に見ます。その後、氏が田代試験場で撮影してきたH2B用のLE-7Aを2機束ねた燃焼実験動画の上映、そしてこのあとに続く堀晃氏による梅田地下街の話などがありました。

 

そして「堀晃と行く『梅田地下オデッセイ』」。私を含めた数人は不参加でしたが(私は仕事をしていた)、ほとんどの人が参加。最後にお待ちかねの懇親会へとなだれ込みました。

 

いやいや、楽しい一日でしたが、翌日に控えたシノプシスと簡易シナリオのアップは出来るのか?そしてメールマガジンは無事に出せるのか?などなどの不安も同居した状態で翌日、第1日目へと続くのでした。

辞書を作ろう

1.はじめに
 この分科会は、いつも「百科事典を送る」とか「セサミストリートを送る」などでお茶を濁し、「これで相手と意思疎通が出来るようになりました」と言って いた意思疎通や翻訳関係が、そんなに簡単ではないのではないか?というところが出発点となった分科会である。従って、辞書のあるべき姿を追求するべく開催 されることになった(と理解している)。
以下に議論の流れを見ていこうと思う。

2.人類の言語学は役に立つのか?
 まず最初に議論となったのは「人間の言語を扱う言語学は役に立つのか?」である。
当然、相手との意志の疎通を考えるわけだから「翻訳」という二文字が頭の中にあったのは否めない。ところが、これは中間言語方式だのトランスファー方式だ のという方法論を調べておいたものの、お互いの交流が相当進んでいないと役に立たない。むしろプレコンタクトが終わり、交流が軌道に乗ってからの話になる のではないか、相手とまず交渉するに当たっては、そんなに豊富な語彙を得ることは出来ないだろうと思われ、あえなく頓挫した。
続いて出てきたのは文化人類学で行われる「基本的な共通語彙を収集する」というものだが、これも習慣や文化が違うといったレベルではなく、そもそも惑星 環境や体の構造が違う者同士では、地球上で規定されている「共通語彙」というものは何の役にも立たない事が明らかになった。つまり今現在地球上で行われて いる言語学の大系は、コンタクトを行う上ではほとんど役に立たない、ということがいきなり判明し、分科会はいきなり持ってきていた資料が役に立たない、と いう結論に達した。ここまでは10分程度。

3.プレコンタクト用辞書の構築(数学・物理学編)
 そこで切り口を変え、いつも苦労しているプレコンタクト段階で「相手に自分の意志を伝えるのに必要な概念」を抽出し、「それらを伝える手段」を考えるという内容にシフトした。
まず最初に伝えたい概念と伝えるのに使えるモノとを整理した。まずは伝わりそうなモノを以下にまとめる。

・名詞(モノとして示すことが出来る物)?
・数学
・物理量
・幾何
・肯定否定(好き嫌い)

ただし上記のものも、名詞はわかるかも知れないが、それがどれほどの役に立つのかはわからないという話になった。
「そうか、相手の惑星にはこんなものがあるのか」
程度にしか役に立たないからだ。

さて、続いて伝えたい概念を抽出するために、CJ4の時の地球人側メッセージを基に相手に伝えたい例文を考えた。なるべく簡単な物で、かつCJ4の時 に、何が何でもアヒストに伝えたかった文言をいくつか挙げてもらった。これは地球人側、アヒスト側の両方の切実だったメッセージを選んだつもりである。

1)木星軌道より内側には来ないで!(地球人側)
2)地球へ行っても良い?(アヒスト側)
3)あなたの星で一緒に住みたい(アヒスト側)

1)には位置、領域の概念、移動の概念(時間や因果関係)、否定の概念に意図(希望)、そして主客の概念が含まれていることがわかる。2)も同様に位置、 領域の概念、移動の概念(時間や因果関係)、疑問と意図、そして主客がある。3)もほぼ同様だ。つまりまとめてみると以下のようになる。

①位置・領域
②移動の概念 → 時間(因果関係)
③否定 → 答えを求めている場合あり(5W1H)
④意図(希望)
⑤主客

以上5つの概念を伝え、お互いに共通に使用することが出来れば、プレコンタクト段階での意思疎通はかなり楽になるはず、という話になったわけだ。
①、②は物理や数学の範囲で何とか片づくんじゃないか、という話でほぼ片づいた。③はただ単に肯定否定だけであれば数学の範囲だが、結局5W1Hをある 程度使えるようにする必要があるのでは?ということになった。疑問文が使えるのとそうでないのとでは、会話における幅が違ってくるからだ。とは言え、基本 的には数学・物理を中心とした方法論で何とか片が付きそうな感じである。
⑤はそれこそ自分の姿と相手の姿を使用すれば伝わりそうなものである。

4.プレコンタクト用辞書の構築(快・不快編)
 ということで、問題は④である。特に「希望する」という内容をどう伝えるのか?が争点になった。これはなかなか難しいが、方法としては「快・不快」を伝えることが出来れば良いのではないか、という意見が出た。
例えば例文の1)だと
「木星の公転軌道よりも恒星に近い領域にあなた(がた)が入ってくるのは、我々にとって不快である」
と要素に分解して記述できる。これならば「来て欲しくない」という意図が伝わるのではないか?と考えたわけである。
この調子で行くと例文の2)は
「我々が地球に行くと、あなた方は不快? YES or NO」
3)は
「我々が地球にいるのは、我々にとって快である」
などになる。

上記のように切り分ければ、①~⑤を伝える手段さえ確保し、記号による体系化を行うことによって、お互いが相手の意図を理解出来る程度まではなるのではないかと考えられるわけだ。
ちなみにちょっと話はそれるが、一つの言葉には一つだけの意味・概念のみを持たせる必要がある。これはAC1でも議論になったとおりで、一つの言葉・単語 に複数の意味を持たせるのは、人間はそのような使い方をしていてもシチュエーションによって意味を取り分けるが、異星人相手には不可能だからだ。

さて本論に戻るが、となると、あとは「快・不快」をどのようにして伝えるのか、というところに問題が集中した。これは単純に「YES・NO」ではないた め、切り分ける必要がある。また数学的手法を用いる事は出来そうにない。そこで鳥が縄張りを主張するために高い声で啼いたり、何度も短い音を発して警告し たりするという手法はどうかという提案がなされたりした。しかしこれもどういう受け取り方をされるのかがわからないため、もう少し生命にとって基本的な要 素で行う必要があるだろうということになり、以下のようなものが提案された。

・エネルギーがない、子孫が残せない、住めない環境などは「嫌」「不快」
・エネルギーがある、子孫が残せる、住める環境などは「好」「快」
・また環境の変化は「不快」など
・これらを大量に送ることにより、「好・快」「嫌・不快」の別を伝える

数を多く送るのは、相手の推理力・洞察力、要するに推論する力に期待するためである。つまり文明を築くぐらいなら、こういった能力を持ち合わせているだ ろう、ということである。ただし、「事例から一般性を見いだすような知性は一般的なのか?」という意見もあった。もしこういった能力を持たない、いわば職 人集団のような文明の場合はいくら送っても無駄かも知れないではないか、ということなのだが、それはそれで「わかった、皆まで言うな!」と理解してくれる かも知れない、という話にはなった。

5.その他
 その他議論の出たところをまとめてみると「肯定否定」の話のところで
「真偽と肯定否定は同一ではないのでは?」
という意見が出た。つまり「YES・NO」と「TRUE・FALSE」は別の概念だから、切り分ける必要があるのでは?ということだ。数学では「YES・ NO」が送れるのではなく、あくまでも数式として送ることが出来る概念は「TRUE・FALSE」であるため、その辺の詳細な詰めが今後必要になると考え られる。

また「文の構造をツリー化する」とか「文の数を絞る」なども意見として出ていた。いずれにせよ、こういったものは数学的・物理的な概念にせよ、先ほどの 「快・不快」の様な概念にせよ、何らかの通信フォーマットを構築したならば、あとはその共通基盤を使って例文をがんがん送るしかない、という流れで分科会 は終了した。

最後に参加者から出た感想を一つ。
「コンタクトって恋愛ドラマみたいなもんだな。『行ってもいい?』『来ちゃダメ!』『あなたと一緒になりたいの』ってね。」
なんともはや・・・。

10光年先を見るために

1.はじめに
 この分科会の目的は、いつも「まぁこれくらいなら見えるんじゃないの?」と適当に流してきた観測をより厳密に、「どれくらいのスペックの機器があればど のくらいまで観測が可能なのか?」を検証することである。そのため、典型的なコンタクトの例として10光年先の様々なものがどれくらい見えるのかを設定し た。これより遠いところもこれを基準にすれば、原理的にどれくらい観測可能かは計算が可能となる。
分科会は以下のように、まず課題を設定し、それを波長ごとに分類し、ほぼ同じ機材を使用できるものにグループ分けして検討を行っていくという方式を取った。ここではグループを「可視光線・赤外線」「電波」「X線・γ線」にの3グループに分類した。

2.課題設定
 まず最初に課題設定を行った。以下に出てきた観測したい項目を波長ごとに分けて列挙する。

1)惑星の有無は確認できるか?
2)大気や水の有無は確認できるか?
3)地球型惑星の表面の様子はわかるか?
4)建造物など都市の様子などを確認できるか?
5)異星人の顔は確認できるか?

6)電波放送は受信できるか?
7)核実験は検出できるか?
8)宇宙船の核パルスは検出できるか?

1)~5)は明らかに可視光線または赤外線領域の話だ。6)は電波の話だし、7)、8)はX線・γ線である。では3~5章にかけて、実際に考察を行っていく。

3.可視光線・赤外線
 まず基本として、1)の「惑星を見るためには」を考える。大きさは地球程度だと考えると、大体1万km程度のもの、ということになる。詳しい計算は7章 の「補足」に譲るとして、結果としては1光年先だと見かけの大きさは0.2ミリ秒角(mas:mili arc second)ということになる。つまり10光年先だと0.02mas。計算を簡単にするために0.01masとしよう。
今、すばる望遠鏡(口径8m、簡単のために10mとする)の分解能が10mas程度の分解能であり、分解能は単純に口径に反比例するので、3桁分解能を上 げるには3桁口径を大きくすれば良い。となると10km。ただしこれだと惑星が点として写るだけなので、せめてWindowsデスクトップ程度に写るよう な解像度(XGAくらい)が欲しいとなると、さらに3桁上げて1万km。地球サイズの鏡があれば何とか。ちょうど10kmの大きさの物が点として写る程度 だ。
しかしこれだけのサイズの物を向けたい方向に動かすのはかなり難しい。そこで干渉計を考えることにする。光・赤外干渉計だ。これならば惑星の光を捉えることが出来る口径の望遠鏡を必要なだけ離してやればOKだ。
ではどれくらいの口径が必要かというと、1光年先から地球を見ると、その明るさは1mJy。10光年先だと明るさは100分の1で0.01mJy。すばる望遠鏡ならば十分捉えることが可能だ(図1)。
これで惑星の写真を撮影するための大体のスペックが決まった。口径10mの望遠鏡を複数台、地球と静止衛星軌道あたりに置く。もしくはもうちょっと小さな惑星でも検出・観測できるように、地球-月系の干渉計を構築すればよい。
観測手順としては、まず相手恒星系の恒星が邪魔になるので、コロナグラフという特殊な加工を施した望遠鏡でもって、少し倍率を落として、惑星の位置を検出する。その後、干渉計でイメージを作るのだ。

ではこれを基本として2章で列挙した2)~5)を検討してみよう。
2)はスペクトルの話なのでここでは一旦置いておく。すると検討にのぼるのは3)~5)だが、スケールとしては以下の様になる。
3)サイズ1~10km程度 → 分解能10μas~1μas
4)サイズ10~100m程度 → 分解能0.1μas~0.01μas(100nas~10nas)
5)サイズ1~10cm程度 → 分解能0.1nas~0.01nas

上記のスケールを点ではなく、撮影できる程度の分解能で達成するには、3)は1)よりも3~4桁干渉計の基線長を長く取る必要があるので、1千万~1億 km離した干渉計が必要となる。まぁ、1AUも離せば良いのだから、地球近傍と太陽-地球系のラグランジュ点(三角形解)あたりに設置すればOKである。
4)はさらにそれよりも2~3桁上なので、100億~1千億km。AUで言うと約60~600AU。すでに現実的な数字では無くなってきた。冥王星軌道の両端に望遠鏡を設置して干渉計にする必要があるが、これは同期を取ることが出来ないのでは?
5)はさらに2~3桁上がるので6万~60万AU。光年で言うと1~10光年。相手の星系まで探査機を飛ばした方が手っ取り早い。

というわけで、現実的には10光年先の「惑星表面の都市の様子が観測できる」くらいまでが現実的な値と言えよう。

ではスペクトル観測をする必要のある2)であるが、これは惑星が十分な明るさで観測できれば問題ないので、1)を満たすことが出来ればほぼ大丈夫という 判断をしてよい。ただしぎりぎり写るという程度では分光できないので、ある程度は余力を持たせる必要がある。明るさは口径だけに拠るので、10m程度の口 径があればぎりぎり。余力を持たせるためには数等級暗いところまで検出できる必要があるとすると3倍程度、つまり30m程度の口径があれば十分であろう。

4.電波
 例えば10光年先から現在の地球から出て行く電波を捉えることが出来るかどうかを考える。そこでまずは現在の電波望遠鏡の感度を基にして、10光年先での放送される出力の下限値を算出した。
さて、現在の電波望遠鏡の感度は大体0.1mJy(ミリ・ジャンスキー)という値である(図1参照)。Jyという単位はあまりなじみのないものであると 思われるが、これはSI単位系では1E-26W/m^2/Hzとなる。従って0.1mJyは1E-30W/m^2/Hzとなる。
ここから放送出力を算出する。10光年という距離は約1E+17mだから、これを掛け合わせると最低限の放送出力は1E+4W/Hzとなる。周波数あた りの強度が10KWということだが、通常はもっと大きな出力で放送しているため、十分検出(視聴)可能だといえる。逆に言うとこれよりも出力の弱い、例え ばアマチュア無線や地域FMなどを受信するのは不可能と考えて良い。

また分科会内では議論がなかったが、分解能に関しては可視光線の1)と同等の分解能を現在のVLBIで達成していることから、地球型惑星の表面で強力な電波を発している箇所を特定できる程度の能力は十分あると考えられる。従って7)はクリア可能だろう。

5.X線・γ線
 これはかなり難しいのだが、2つの事柄に分けて考えよう。1つは分解能、そしてもう一つは感度である。
まず分解能だが、X線はともかく、現在のところγ線に分解能を求めるのはかなり難しい。というのも、現在のγ線観測は基本的に空気シャワー現象に伴う チェレンコフ光を観測している。そのためγ線のやって来た方向はそれなりの精度で特定できるが、ある程度以上の範囲まで絞ると、それ以上は誤差の範囲内に なってしまい、放射源の位置を特定するのは不可能と言って良い。実際、γ線バーストなどの観測も発生後すぐに光学望遠鏡がフォローアップ観測を行い、発生 源を特定している。
X線の方は数年前に国立天文台で開催された「大風呂敷研究会」で発表された物の中に1masの分解能を達成するという構想があることから、20年くらい のスパンで、このレベルが達成される可能性がある。つまり、現在のすばる望遠鏡クラスの分解能は達成されると考えて良い。ただし、干渉計に関しては同期を 取るのがほとんど絶望的なので、これ以上あげるのは無理かと考える。

続いて感度だが、あるエネルギー幅の中に入る光子の数が1秒、1平方cmあたり1E-5個くらいまでは誤差が少なく測ることが出来ると言って良いと思わ れる。もちろん観測時間(積分時間という)を延ばせば、もっと暗い天体でも写るのだが、誤差を考えるとあまりお奨めは出来ない(図2)。

さて、ではこのスペックで10光年先の何が見えるのかという話だ。つまり8)と9)を考えるわけだ。まずTNT換算で1メガトンクラスの核爆弾が発する エネルギー量は約1E+16ジュール。電子ボルトに換算するとざっと6E+34電子ボルト。これが全て1キロ電子ボルトのフォトンに変わったとすると、 6E+31個のフォトンに変わる。ちなみに1キロ電子ボルトという値を採用したのは、その辺のエネルギーレンジがもっとも感度よく検出できるからだ。とい うわけで、これが地球近傍にたどり着いたときにどの程度のフォトン数になるかというと、1平方cmあたり6E-6個。ぎりぎり見えそうな気もするが、これ では検出は無理である。誤差とかノイズに埋もれてしまっているために8)は完全に玉砕である。つまりその程度のものは見えないのだ。逆に見えるとすると、 上記の仮定の下でもTNT換算でせめて10~100メガトン。もちろんニュートリノに持って行かれる分や、その他の波長に食われる分を考えるとさらに 2~3桁くらい上でないと検出は出来ないことになる。そう言う意味では9)も不可能だろう。
すると、1メガトンクラスの核爆弾が1光年先で爆発しても、X線では見えない・・・可視光線でも・・・かもしれない。

6.最後に
 いろんな人から感想をいただいたが、「意外と見える」「意外と見えない」という意見が全てを物語っていると言える。これは参加した各人が「どの辺までは 見えるだろう」と漠然と抱いていたイメージにかなりのばらつきがあったことを物語っていると言える。ただ言えることは、どちらかというと「意外と見えな い」と思う人が多かったことだ。私自身も今回の分科会に先立ってかなり綿密に資料を集めた上、計算も行っていたが、思ったよりも見るのは大変そうだと思っ たのだ。
例えば可視光線・赤外線では、「そう苦労しなくても冥王星レベルは見えるだろう」とか「小惑星の大きいヤツは見えるだろう」と思っていたが、結構技術的 に高いものを求められると感じた。実はこの原稿を書いている最中に気がついたのだが、地球と土星の見かけの明るさがほぼ同じ、天王星、海王星あたりはすば る望遠鏡では検出不可能だということがわかった。何と恒星から離れすぎた惑星は、例えそれが巨大惑星であっても内惑星よりも暗くなってしまうのだ。そうい う意味では望遠鏡は大きいに越したことはないのだろう。

7.補足資料
 以下に、計算を簡単にするための、いくつかの数値を挙げておく。

1)大きさ&角度
・ラジアンから秒角への変換 ×2.0E+5
・1光年=約1.0E+13km=1.0E+16m=1.0E+18cm
・地球型惑星の直径=約1.0E+4km=1.0E+9cm
・地球型惑星の見かけの大きさ(1光年先)=1.0E-9ラジアン=2.0E-4as=0.2mas
・上記をXGAで見たければ・・・
10m鏡で10mas程度の分解能なのだから、1.0E+3倍
1000*1000Pixcelくらいで見たければ、1.0E+3倍
6桁上げればよい ・・・ 1万km

2)明るさ
・地球型惑星の明るさ = 1.0E-8erg/cm^2/s/sr/Hz
・地球を1光年先から観測すると
単位面積あたりの明るさ×面積/距離の2乗なので
(1.0E-8)×1.0E+18/1.0E+36 = 1.0E-26 = 1mJy
・上記を可視光線での等級で言うと約28等

3)その他
波長換算表
1eV =1.2398E-6m =2.4180E+14Hz
輻射強度
1eV = 1.6022E-12erg
1Crab = 2E-8erg/s/cm^2(かに星雲の明るさ)
1eV/s/cm^2/eV = 0.6626E-26erg/s/cm^2/Hz
Jy = 1.0000E-23erg/s/cm^2/Hz